体調不良が長期に続く慢性疲労症候群
頑張り過ぎず、症状安定を目指す(大阪市立大学医学部付属病院客員教授 倉恒弘彦医師)
突然、強い倦怠(けんたい)感に見舞われ、微熱や立ちくらみなどの症状が続く「慢性疲労症候群」。筋痛性脳脊髄炎とも呼ばれ、全身の筋肉痛に悩まされる人も多い。大阪市立大学医学部付属病院疲労クリニカルセンター(大阪市)客員教授の倉恒弘彦医師に聞いた。
慢性疲労症候群、筋痛性脳脊髄炎に対する治療
▽総合診療科の受診を
慢性疲労症候群では、〔1〕6カ月以上続く原因不明の体調不良(微熱、頭痛、筋肉痛、思考力低下など)による活動量の大幅な低下〔2〕労作後の極度の倦怠感〔3〕睡眠障害〔4〕立ちくらみなどの起立調節性障害や認知機能障害―などが出現する。
一部の患者には脳の血流障害や免疫の異常、神経の炎症反応などが見られるが、多くの場合は検査で異常が見られないため、診断は困難だ。「総合診療科を受診し、専門医に紹介してもらうことが早期治療につながります」と倉恒医師は説明する。
確立された治療法はないが、症状が悪化した時に体を休めることが重要だ。回復期は患者の状態を熟知する医師などの指導の下で、少しずつ活動量を増やす段階的運動療法で改善する場合もある。「痛みへの恐怖心から、1日中布団から出られない人もいます。体調が良い時に起きて風に当たるなど、成功体験の積み重ねが効果的なこともあります」と倉恒医師。
中には、セロトニンという神経に情報を伝える脳内物質(神経伝達物質)の代謝が低下している患者がいるという。セロトニンは痛みの抑制に関わるため、脳内代謝を改善する作用がある抗うつ薬「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」を服用することがある。漢方薬の服用やビタミンの補充、細胞を酸化し傷つける酸化ストレスを抑える健康補助食品の摂取、体を温める温熱療法、上咽頭を塩化亜鉛などでこするBスポット療法を勧められる場合もある。
▽病気への理解を促す
ただ、症状が緩和しても少し活動するだけで再び疲労困憊(こんぱい)しやすい。治療後も患者の半数近くは復職や復学が難しく、4分の1は家庭生活でも介助が必要となる。「自分の状態を把握し、できると思う7割程度の力で生活し、比較的良い状態を長く続けることが大切です。頭痛など症状が悪化する兆候があれば早めに休みましょう」
この病気は、怠けているだけと誤解されやすいため、周囲の理解も欠かせない。周囲の人に疾患啓発の冊子や患者の診断書を見てもらうなどして、理解を促すのも一つの方法だと倉恒医師は言う。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/01/17 05:00)
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