治療・予防

骨粗しょう症予防にビタミンK
~納豆や緑色野菜を(神戸学院大学 田中清教授)~

 骨の量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる骨粗しょう症。骨折すると生活の質(QOL)が低下し、要介護の原因になりうる。近年、骨粗しょう症予防で注目されているビタミンKの有用性について、神戸学院大学(神戸市)栄養学部の田中清教授に聞いた。

納豆摂取量と骨粗しょう症による骨折リスク

 ◇軽度の不足で骨形成低下

 田中教授によると、ビタミンKは脂質に溶けやすいビタミンの一種で、ブロッコリーなどの緑色野菜やチーズ、納豆などに多く含まれる。「腸で吸収されたビタミンKはまず肝臓に運ばれ、肝臓で利用された後に血液中や骨へ送られます」

 ビタミンKは体のさまざまな場所で重要な役割を果たす。肝臓では血液を固まりやすくし、出血を止め、血中のビタミンKは血管壁のカルシウム沈着を抑え、心血管病を予防する。

 「骨に達したビタミンKは、タンパク質を活性化し骨形成を促します。ビタミンKが少し不足しただけで骨が作られる作用が低下することも分かっています」

 骨折リスクが低下

 田中教授は、これまで骨粗しょう症予防として、カルシウムやビタミンDが強調されてきたが、ビタミンKも重要と指摘。「例えば、大腿(だいたい)骨付け根の骨折リスクは、ビタミンK摂取量が多い人ほど低くなります。摂取量が多い人は少ない人より骨折リスクが低下するとの報告もあります」

 ビタミンKにはK1、K2があり、K2(MK―7)の方が体内に長く留まるため、骨形成への影響も大きい。「特に納豆はビタミンK2を豊富に含むため、積極的に食べるとよいでしょう」

 閉経後の日本人女性約1400人と骨粗しょう症との関係を調べた研究もある。約15年間の追跡期間中に約170人の骨粗しょう症の骨折が確認されたが、「納豆を週に1~6パック食べる人は、週に1パック未満の人に比べ、骨粗しょう症による骨折リスクが低い傾向が見られ、週に7パック以上食べる人は44%低くなると報告されています。納豆が苦手な人は、K1を含む緑色野菜や海そう類、K2を含むチーズなどの動物性食品を取るようにしてください」

 さらに田中教授は「血液をさらさらにする薬であるワルファリンを飲んでいる人は、(血液凝固作用がある)ビタミンKの摂取を控える必要がありますが、最近はビタミンK摂取制限が不要な新しい薬が普及してきました」としている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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