治療・予防

関節リウマチで起こる骨粗しょう症
炎症抑制と骨ケアの両輪で予防(湯川リウマチ内科クリニック 湯川宗之助院長)

 関節リウマチは、体に入ってきたウイルスや細菌を攻撃する免疫機能が暴走し自分の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患だが、合併症の存在も見逃せない。中でも骨がもろくなる骨粗しょう症は、関節リウマチ患者の3~4割と高い確率で起こる合併症だ。湯川リウマチ内科クリニック(東京都武蔵野市)の湯川宗之助院長は「なぜ関節リウマチに骨粗しょう症が合併しやすいのかを理解し、きちんとリウマチをコントロールすることが大事です」と話す。

骨粗しょう症を合併すると骨折の危険が高まる

骨粗しょう症を合併すると骨折の危険が高まる

 ▽背骨や股関節の骨折

 関節リウマチ患者は全国に70~100万人と推定され、30~50代の女性に多い。遺伝的因子や喫煙、ストレス、歯周病、女性ホルモンなどの環境因子が発症に関与すると言われている。免疫機能が壊れ、関節の内側を覆う滑膜を攻撃して炎症が起こり、痛みや腫れ、関節の破壊が生じる。

 関節リウマチに合併する骨粗しょう症には、炎症が起きている関節付近に起こりやすい傍(ぼう)関節性骨粗しょう症と、全身に生じる骨粗しょう症がある。湯川院長は「関節の炎症を起こす物質(サイトカイン)が、新しい骨の形成を抑制し、古くなった骨の破壊(骨吸収)を促進することで骨粗しょう症が起こります。関節リウマチの症状をコントロールできていない人、治療でステロイドを服用している人、閉経後の女性は、骨粗しょう症を合併しやすくなります」と注意を促す。両者が合併すると、背骨の圧迫骨折や股関節(大腿骨頸部=だいたいこつけいぶ)の骨折が多くなるという。

 ▽骨密度検査や生活改善

 関節リウマチ患者の骨粗しょう症を防ぐには、まず関節リウマチの治療薬で関節の炎症や腫れを抑えることが重要だ。「2003年に生物学的製剤が登場し、炎症を悪化させるインターロイキン(IL)―6や腫瘍壊死(えし)因子(TNF)などのサイトカインを抑えられるようになりました。これにより、寛解(症状が治まった状態)に至ることが十分可能となったのです」と湯川院長。

 さらに湯川院長は、日頃から骨粗しょう症の予防に取り組むことも大切だと説く。「関節リウマチには骨粗しょう症が合併するものと捉え、定期的な骨密度の検査やバランスの取れた食事、無理のない適度な運動を心掛けてください。骨粗しょう症の合併を防ぐことは、関節リウマチの治療と同じくらい大切です」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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