治療・予防

慢性腎臓病の食事療法に光明
~低たんぱく質米で効果(新潟大学大学院腎研究センター 細島康宏特任准教授)~

 放置すると血液透析が必要になったり、脳卒中や心臓病のリスクが高まったりする慢性腎臓病(CKD)。その患者数は全国で約1330万人と推定され、CKDの食事療法ではたんぱく質制限が重要といわれる。最近、低たんぱく質米でたんぱく質制限がしやすくなるとの研究を発表した、新潟大学大学院腎研究センター(新潟市)病態栄養学講座の細島康宏特任准教授に話を聞いた。

標準体重当たりのたんぱく質摂取量の推移。低たんぱく質米を食べた患者の方がたんぱく質摂取が低い結果に

 ◇ネックだった継続性

 食事で摂取したたんぱく質は体内で利用された後に老廃物となり、腎臓から尿とともに排せつされるが、CKDで腎臓の働きが悪くなると老廃物が排せつされにくくなる。「老廃物が体内にたまると、尿毒症と呼ばれる危険な状態に陥るため、たんぱく質制限が必要です」

 ただ、実際にたんぱく質制限による食事療法を受けているCKD患者は少ない。「特に高齢で、たんぱく質制限をやり過ぎると、筋肉が痩せ要介護となるリスクが高くなります。また、この制限食はあまりおいしくないため、長く続けられないこともあるのでしょう」

 ◇たんぱく質摂取量が減少

 これまでの多くの臨床試験では、たんぱく質制限を守り続けられる患者が少なく、効果を十分に証明できなかった。そこで細島特任准教授らは、治療用特殊食品の一つである低たんぱく質米を用いて試験を行った。

 「たんぱく質は、米やパンなどの主食にも多く含まれています。試験に用いたのは、特殊加工により、おいしさを損なうことなく、たんぱく質量を普通米の25分の1まで減らしたパックご飯。減らした分、肉や魚などのおかずを増やすこともできるので続けやすいと思います」

 試験の結果、栄養指導に加えて低たんぱく質米による食事療法を行ったグループは、栄養指導だけのグループに比べ、2、4、6カ月後のたんぱく質摂取量が明らかに少なく、目標レベルに近づくことが分かった。腎障害の程度を示す尿たんぱく値も改善した。

 「低たんぱく質米は、たんぱく質制限を続けやすくするツールとして有用です」と細島特任准教授。今後、長期試験で腎機能低下を抑える効果を検討したいという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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