腎臓病の人の食生活
~まず自分の状態を理解(赤羽もり内科・腎臓内科 森維久郎院長)~
腎機能が低下すると、慢性腎臓病(CKD)を発症し、やがて透析治療が必要になる。腎機能を守るためには食生活の見直しが必要だ。赤羽もり内科・腎臓内科(東京都北区)の森維久郎院長は「まずは無症状のうちに発せられる腎臓のSOSにいち早く気付いて受診し、自分の腎臓の状態を理解しないと長続きしません」と話す。
食生活の見直しが大事
▽放置せず、まず受診
腎機能の低下を表す指標に蛋白(たんぱく)尿がある。たんぱく成分が尿中に出るのは、腎臓に異常があるサインだが、自覚症状は無い。森院長は「たんぱくが2+(プラス)以上の人は、将来人工透析になる確率が高いので、精密検査を受ける必要があります」と呼び掛ける。
基礎疾患の治療も大事だ。「人工透析に至る患者の6割近くは、高血圧や糖尿病が原因です。これらの基礎疾患がある場合はしっかりと治療することが腎臓を守ることになります」
▽個別指導の食事制限
同院では、患者に腎機能の状態を数値で示し、十分に理解してもらった上で食事指導を行う。ただ、全員に同じ食事制限を行う必要はなく、重要なのは塩分制限だ。腎機能の低下は塩分の排せつを悪化させ高血圧を招くため、制限で血圧を下げられるからだ。森院長は、1日当たりの塩分の推定摂取量を尿検査から割り出し、患者ごとに目標値を立てている。
また、野菜や果物に含まれるカリウムの制限については、「血液中にカリウムがたまると、突然死の原因となる不整脈を起こす恐れがあるので、5.5mEq/L以下にすることが推奨されています」と森院長。
しかし、野菜や果物を長期間控えるのは難しいため、数値が上がりやすい食品から制限する。「まず、野菜や果物のジュース、ドライフルーツ、ソース類など、体に吸収されやすい食品から控えます。次にバナナや根菜類を制限。葉茎菜類は比較的問題なく食べられます」
ただ、中にはカリウムの値が高くない患者もいる。その場合は特に制限は行わない。同院では定期的に血液検査と尿検査を行い、数値を見ながらその都度、食べてよさそうな食品や制限する食品を指導している。
「食事制限は、主治医や栄養士と相談しながら、頑張り過ぎないように行うのがこつです」と森院長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/05/20 05:00)
【関連記事】