「睡眠の質」維持で予防
~糖尿病に伴う腎機能低下(兵庫医科大学糖尿病内分泌・免疫内科学講座 角谷学講師)~
糖尿病の高い血糖値が続くと合併症の一つとして慢性腎臓病になり、人工透析に至る恐れもある。予防には血糖値の管理だけでなく、睡眠の質を保つことが重要だとする研究結果を兵庫医科大学(兵庫県西宮市)糖尿病内分泌・免疫内科学講座の角谷学講師らがまとめた。
睡眠の質を保つことが大事
▽寝返りで計測
研究では、慢性腎臓病を発症していない糖尿病患者231人に体の動きを計測する腕時計型の機器を装着してもらい、睡眠の質を評価した。寝返りなどの動きは、睡眠中に同じ部位ばかりが圧迫されるのを防ぐために必要だが、多過ぎる場合は質の低下を表している。腎機能については、3カ月ごとに最長9年間の変化を調べた。
その結果、睡眠の質が低い人は、そうでない人よりも腎機能が低下しやすかった。また、年齢や高血圧、コレステロール値の異常など、腎機能低下を招く他の要素の影響はなかった。慢性腎臓病を発症した糖尿病患者の睡眠の質に関する研究は既にあるが、未発症でも睡眠の質の低下が腎機能を低下させる因子ということになる。
その理由は明らかではないが、角谷講師は、本来、昼間の身体活動時に優位になる交感神経が睡眠中も働くことで、炎症を起こすタンパク質の産生や血管の収縮などを介して腎機能の低下につながるとみている。
睡眠の質の低下によって、神経を養う因子「BDNF(脳由来神経栄養因子)」が減少することも分かっている。その結果、神経の指令が滞るなどして腎臓の血流が低下し、機能が低下した可能性もあるという。
▽正しい生活リズムを
角谷講師は「糖尿病患者に睡眠の状況を尋ねると、最近眠れていない、夜遅くまで仕事をしているといった声を聞き、睡眠の質が低下していると思われるケースがあります」と話す。
そのような人には、糖尿病の食事療法、運動療法、薬物療法を続けながら睡眠に気を付けてもらうという。「朝きちんと起きて日光を浴びる。3度の食事を食べ、活動的な生活を送る。そうしたメリハリをつけた生活を心掛ければ、夜はぐっすり眠れるでしょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/05/29 05:00)
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