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肘内障(ちゅうないしょう)は、子どもが手を引っ張られた拍子などに肘の辺りの痛みを訴え、肘が曲げられなくなる小児特有の外傷の一つだ。「痛がって腕をぶらんと下げた状態で来院された場合、まず肘内障を疑います」と、久我山整形外科ペインクリニック(東京都杉並区)の佐々木政幸院長は話す。
正常な肘(上)と肘内障
◇原因は靱帯のずれ
「肘が抜けた」と表現されることもある肘内障は、骨折と共に小児の代表的な肘関節の外傷の一つ。転びそうになった子どもの手を親がとっさに引っ張る、洋服を脱がせる、寝返りを打つなど、原因となる動作はさまざまだが、「腕に力が入っていない状態でひねるような動作により生じるケースがほとんどです」。
肘から手首までの前腕部には、親指側に橈骨(とうこつ)、小指側に尺骨(しゃっこつ)という2本の骨がある。橈骨と尺骨をつないでいるのが輪状靭帯(りんじょうじんたい)で、「バイバイ」と手を振ったりするときなどの前腕の回転動作を支えている。
幼児は輪状靭帯が発達途中であるため、不意に引っ張られたり、ねじったりすることでずれが起きやすいとされる。輪状靭帯がずれると肘周辺に痛みが発生し、腕に力が入らなくなるためだらりと下がった状態になる。
◇早めに整形外科へ
まれに服を着替えさせるなどしていて輪状靭帯が元に戻るケースもあるが、「放置しておいても痛みは消えませんし、そのまま固まってしまうリスクや骨折の可能性も否定できませんので、早めに整形外科を受診しましょう」と佐々木院長はアドバイスしている。
骨折や脱臼を疑いレントゲン検査を行うケースもあるが、肘内障の場合、レントゲンでは異常は確認できない。「問診で痛みが発生したときの状況を聞き、診察で骨折による腫れがないことが確認できれば肘内障を疑い、整復を行います。橈骨頭を押さえながら肘を曲げていき、コクッという感覚があると、輪状靭帯が元に戻り治ったことが確認できます」
湿布や痛み止めなどは要らず、子どもは程なく痛みが消えていることに気付くと、通常通りに肘を動かすという。中には繰り返し起こす子どももいるが、成長とともに発生することはなくなるため、後遺症なども心配ない。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/10/21 05:00)
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