首の病気で手足にしびれ
~頚椎椎間板ヘルニア(東邦大学医療センター大橋病院 武者芳朗教授)~
背骨(脊椎)は、椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨が積み重なってできている。頚椎(けいつい)椎間板ヘルニアは、首の部分の椎骨と椎骨の間にある椎間板がつぶれてふくれ、その中身が突出して首の神経を圧迫する病気だ。
東邦大学医療センター大橋病院整形外科(東京都目黒区)の武者芳朗教授は「頚椎椎間板ヘルニアは、幅広い年代に見られます。首の痛みや手足のしびれ、まひなどの症状があれば、早めの受診をお勧めします」と話す。
手足がしびれるときの受診のポイント
◇脊髄や神経根を圧迫
頚椎には、脳から手足や体幹に命令を伝える脊髄という神経を束ねた本幹と、神経根(脊髄から左右に枝分かれして上腕から手指に向かう神経)が納まる。頚椎は、脊椎のうち上から七つの椎骨を指す。
頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎の椎間板(首の動きの衝撃を和らげるクッション材)がつぶれ、中のゲル状の芯が突出(ヘルニア)した状態だ。「ヘルニアが脊髄や神経根を圧迫すると、神経症状が発生します」
神経症状は2通りある。神経根が圧迫される「神経根症」では、首から片側の腕、手指にかけて痛みやしびれ、感覚異常(痛みや熱を感じにくい)、脱力などの部分的なまひが起こる。
一方、脊髄が圧迫される「脊髄症」では、左右差はあるものの両側の手足でしびれやまひが見られ、歩行障害や排せつ障害が急に悪化するケースもある。「箸を使うなどの細かい手の動作がぎこちない、足が突っ張って歩きにくいなどは、脊髄圧迫症状の可能性があり、早急に整形外科や脳神経外科の脊椎専門医を受診してほしい」
◇手術は早いほど有効
診断には、問診に加え、X線検査やMRI(磁気共鳴画像装置)検査などを行う。症状が軽い場合は、内服・外用薬、頚椎の動きを抑制する装具(頚椎カラー)の使用などで保存的治療を行う。
神経根症は「多くは保存的治療で改善します。約3カ月かけても効果が見られず、痛みやまひのために日常生活や就労に支障があれば、手術療法を検討します」。背中側から椎骨に小さな穴を開け、内視鏡や顕微鏡を用いて神経根にかかる圧力を取り除く、体への負担の少ない手術で対応できる。
脊髄症には、喉側から切開し、脊髄を圧迫しているヘルニアと椎間板を除去する「前方除圧固定術」が行われる。椎間板を取り除いた隙間には、患者自身の骨を移植して金属で固定する。その他、背中側からの手術や、背中側と喉側からの手術の併用が必要な場合もある。
「脊髄症では、まひが急に悪くなり排尿や排便ができないほど重くなった場合は直ちに、進行するまひの場合はなるべく早く、手術が必要になります。一般に、早期に手術するほどまひの改善が期待できます」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/06/25 05:00)
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