新米医師こーたの駆け出しクリニック

慢性合併症だけじゃない糖尿病の怖さ
~すぐ重症化の懸念も~ 専攻医・渡邉 昂汰

 11月は糖尿病予防月間です。今年も全国各地が青色にライトアップされ、さまざまな啓蒙(けいもう)活動が行われる予定です。

 糖尿病についてざっくり復習すると、「高血糖が長年続くことで、さまざまな合併症を起こす疾患」です。こう聞くと、「放置するのは良くないけれど、今すぐ命が危ないということはないんだな」と思いますよね。これも間違ってはいないんですが、実は糖尿病は「発症して間もない人でも、突然命の危機に直面してしまう」という恐ろしい病態も持ち合わせています。

 今回は、慢性疾患として見られやすい糖尿病のもう一つの側面について、お話ししていきたいと思います。

激しい喉の渇きに注意。糖尿病による急性合併症かもしれません

 ◇急性合併症「ケトアシドーシス」

 命に関わるほど危険なのが急性合併症の「糖尿病性ケトアシドーシス」で、一言でいうと、ケトン体によって血液が酸性(アシドーシス)になる病態です。

 適切な治療が行われていない糖尿病患者さんの体内では、インスリンの作用が低下しており、本来エネルギー源となるはずのブドウ糖をうまく使うことができません。すると、脂肪をエネルギーとして使うようになり、この時にケトン体という酸性物質が作られます。また、エネルギーにならなかったブドウ糖は、血糖値の上昇と脱水を引き起こします。初期症状として口渇や倦怠(けんたい)感、吐き気が出現し、さらに病態が悪化すると昏睡(こんすい)状態となります。

 ◇口渇感への対応が最も大切

 重症化させないために大切なのが、口渇を感じた時の対応です。高血糖による口渇だと気付かずに、水分補給のためにジュースをたくさん飲んでしまうと、血液中に処理できない糖があふれ、さらに症状は悪化していきます。糖尿病になって間もない人、自分が糖尿病だと気付いていない人が、このような悪循環に陥ってしまうことがしばしばあり、注意が必要です。

 今まで感じたことのないくらい喉が渇くようになったら、糖尿病性ケトアシドーシスである可能性を考え、水やお茶を飲むようにしましょう。症状が持続したり悪化したりする場合は、病院を受診してください。

 糖尿病肥満の人、生活習慣が乱れた人の病気ではありません。誰でも当事者になる可能性があります。糖尿病による健康被害を少しでも減らすために、いま糖尿病ではない人にもぜひ、今回の話を頭の片隅に置いてもらえたらうれしいです。(了)

渡邉昂汰氏


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。



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