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「人生100年時代」といわれる中で、「健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解し活用する能力」(ヘルスリテラシー)が重要になっている。しかし、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニーが行った国際調査によると、ヘルスリテラシーの自己評価は対象となった6カ国中、日本が最も低かった。専門家は「情報に関する教育が不足していたことが背景にあるのではないか」とみている。
調査は、2023年10月26日~11月7日、日本、米国、英国、オーストラリア、中国、フィンランドの20~60代の3000人を対象にインターネットで実施した。
ヘルスリテラシーについて自己評価を10点満点で聞いたところ、日本は5.4点だった。トップの中国が7.8点、2位の米国が7.6点など他の5カ国が7点台だったのに比べて大きな差があった。
自己評価では日本が最下位だ
◇情報教育を受けていない
京都大学大学院医学研究科の中山健夫教授(健康情報学)は「日本人は読み、書きの能力であるリテラシーが高いとされてきた。調査結果とのギャップは健康や医療に関わるヘルスリテラシーはかなり厳しい状況にある可能性を示している」とした上で、「情報を読み解く教育を受けてこなかった。科目として情報が取り入れられたのは約20年前なので、今の40歳以上の人は学校で学ぶ機会が無かった」と指摘する。一方で、「『情報』が中学や高校の教科になったことは大きな意味を持つ。内実のある教育が期待される」と話す。
京都大学大学院の中山健夫教授
◇低いデジタルツール活用度
医療分野でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が進むと予想されている。それは、病院やクリニックなど医療機関だけではなく、日々の健康管理や医療機関を受診する人たちにとっても大切だという。
最近、スマートフォンやスマートウオッチ、活動量計などのアプリを使うことで日常生活における健康状態のチェックはしやすくなっている。では、こうしたデジタルツールを健康管理に役立てている人たちの国際比較はどうか。
中国が極めて多く、81.0%となっている。米国67.0%、英国55.0%などと続く。日本は39.2%で最下位だ。デジタル機器に親しむ国民性や各国の医療事情を踏まえる必要があるが、日本の関心の低さは際立つ。健康関連のアプリなど玉石混交の状態だが、状況の改善を目指して、現在、国がバックアップして学会がそれらの開発・利用の指針の策定を進めている。
日本は健康管理にデジタルツールを活用する割合が低い
◇共通IDの促進を
世界保健機関(WHO)の報告でも日本の医療におけるICT化はかなり下位に位置付けられている。電子カルテにもいろいろな種類があり、効率化・標準化されていない。中山教授は「患者がさまざまな病院で受けた治療内容を把握し、診療に活用するためには『共通ID』を促進することが大切だ。これも広い意味でのヘルスリテラシーと言える」と話した上で、次のような疑問を投げ掛ける。
「欧州では欧州連合(EU)内で広く医療情報を共有するために保護のルールを作った。使わないための保護ではなく、個人情報の保護と活用の調和を目指している。日本は保護が強調されがちだが、国民にとって本当に良いことなのだろうか」
(2024/01/31 05:00)
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