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日本、自己評価で最下位
~ヘルスリテラシー国際調査~

 ◇権威ある組織の情報優先

 調査で医療に関する情報で困っていることについて聞いたところ、「いろいろな意見があり、判断しづらい」が6カ国とも最多で、約4~5割を占めた。ただ、「正しい情報か間違った情報かわからない」とした人の割合を見ると、他の5カ国が約1~2割だったのに対し、日本は約3割と大きな差があった。

 中山教授は「情報を反射的にうのみにしてはいけない。善かれと思ってSNSで発信すれば、誤った情報が拡散してしまう」と述べた上で、「厚生労働省や国立がん研究センターなどといった権威がある組織や機構が発信する情報を優先してほしい。それが身を守る第一歩だ」と強調する。

 中山教授は「薬剤にしてもワクチンにしても、効果とともに副作用が伴う。医療は益を高め、害を少しでも減らすように努めているが、害はゼロにはならないことを理解してほしい」と言う。ジョークと前置きした上で「日本人が最も好きな薬は、効かなくてもよいから副作用がない薬だ」という話を紹介してくれた。処方薬に比べて効果は小さいが、市販薬でも乱用や依存という問題が起きているように副作用はある。「益と害のバランスをきちんと判断することが大切だが、日本人は害の方に重きを置く傾向があるかもしれない」

日本は医療情報で困っている割合が高い

日本は医療情報で困っている割合が高い

 ◇相談できる医療機関で意外な結果

 気になるのは、「体の不調や違和感を生じたときに、すぐに相談できる医療機関(医療関係者を含む)があるか」を尋ねた質問に対する回答だ。「ある」はトップの米国が88.0%、2位の中国84.4%、3位のフィンランド78.0%などだったのに対し、日本は53.8%と圧倒的に少なかった。日本の調査地点は東京、大阪という大都市であり、この結果はやや意外だ。

 中山教授はこう受け止めている。

 「例えばかかりつけ医を考えると、国民皆保険の日本では米国などよりも良い環境にある。医療へのかかりやすさという点では日本は他の先進国に劣らないだろう。日本の場合、すぐに相談できるかかりつけ医がいても、納得できる説明をしてもらえないといったケースもある。それが反映しているのではないか」

 中山教授は「仕事などで海外で1年以上生活した人たちに聞くと、異口同音に『日本の医療が良いことに気付いた』と言われる」と付け加えた。

 ◇意思決定の難しさ

 医療者と患者が価値観や情報を共有した上で、さまざまな治療選択肢の中から最適と思われる治療法を相談しながら決めていく「シェアド・ディシジョン・メーキング(SDM)」の必要性が高まっている。調査結果では、治療法を検討する際の主体的関与に関する意識について、「主体的に関与できる」とした回答は米国の89.6%がトップで、中国86.8%が続いた。これに対し日本は65.8%と3人に2人の割合にすぎなかった。

 「残念ながら、SDMを理解している医師はまだ多くない。すべて医者が決めてきたことへの反動で、何でも患者の判断に任せればよいと考えたり、悩んでいる患者に意思決定を強いたりすることは大きな誤解だ」

 一方で、患者側の難しさも指摘する。

 「治療法が確立していない病気も多い。その中で、外科的手術か、薬剤か、放射線治療か、または緩和ケアを選ぶのか。医師の判断に任せるのか。医師と必要な情報をやりとりした上で、自分が優先したいこと、価値観に立ち戻って、医師と協力して患者が意思決定に関わる時代になりつつある」 (鈴木豊)

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