治療・予防

最期まで自分らしく
~患者を支える終末期医療(淀川キリスト教病院 柏木哲夫相談役)~

 延命を目的とした治療を行わず、患者が残りの人生をその人らしく過ごせるようにサポートする終末期医療。病院やホスピスだけでなく、老人介護施設や在宅でも行われている。日本で初めてホスピスプログラムを導入し、約2500人のがん末期患者をみとった淀川キリスト教病院(大阪市)の柏木哲夫相談役に話を聞いた。

終末期のみとり

 ◇介護施設や在宅でも

 終末期医療は1980年代以降、末期がん患者の緩和ケアを通じて注目され、重要性が増している医療ケア。余命わずかな人や老衰状態にある高齢者が満足のいく最期を迎えられるように、身体的・精神的苦痛を緩和し、生活の質を保つためのケアが提供される。胃ろう、鼻の穴から胃まで管を入れて栄養を取る鼻腔(びくう)経管、たん吸引など、自宅では難しい身体的ケアに対応しながら、みとりまで行う介護施設も増えている。

 また終末期医療には医師、看護師、ソーシャルワーカーら専門家によるチーム医療が不可欠。「施設によって医療機関との連携や介護レベルの差があるため、家族は信頼できる施設選びが肝心です」

 近年、医師や看護師らによる訪問診療の充実で、酸素吸入や点滴といった医療行為が自宅でも行えるようになった。

 「昔から『最期は自宅で迎えたい』と希望する人はとても多いです。この10年で病院死が減り、住み慣れた自宅で死を迎える人が増えているのは自然な流れです」

 ◇誕生日に語ろう

 終末期の患者には「体・心の痛み、お金や家族関係などの社会的痛み、『私の人生にどんな意味があるのか』といった魂の痛み、という四つの痛みがある。痛みの感じ方はさまざまで、一人ひとりに合わせたケアが必要」と柏木相談役。

 中でも一番大事なのが聴く力という。ケアする側には「死への恐怖を訴える患者さんに、しっかり耳を傾けられる人と時間が必要です。分かってもらえたという安心感がいかに大事か、患者さんから学びました」。

 患者やその家族と信頼関係を築くことも重要だ。新型コロナウイルス感染拡大下で面会が制限された中、ビデオやオンライン通話などの映像を活用し家族との交流を実現させた施設もあった。

 終末期では患者に意識がない、または判断力がない状態も多く、その場合は家族に医療行為に対する判断が任せられる。「日ごろから家族と死の迎え方について話し合う機会をつくることが大事。この世に生を受けた誕生日にどのような最期を迎えたいか、年に1度パートナーと話し合うことをお勧めします」と柏木相談役は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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