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うつ病をはじめとする精神疾患は誰もがかかり得る病気だが、精神科の受診になかなか踏み切れない人も多い。そのような場合にハードルを下げてくれるのが、スマートフォンなどのビデオ通話を利用するオンライン診療だ。慶応義塾大学医学部ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座(東京都港区)の岸本泰士郎特任教授(精神科医)に話を聞いた。
精神科のオンライン診療
◇受診促す効果期待
オンライン診療は、新型コロナウイルス拡大をきっかけに世界で急速に広がった。日本では、全医療機関に占めるオンライン診療は15%(2020年度、厚生労働省調べ)で、普及は他国より遅れている。
とりわけ精神科での普及が進んでいない。その理由として岸本医師は、診療報酬が対面診療より低く設定されていることなどを挙げる。
「精神科の診療は、患者さんと医師との会話が大部分を占めるため、オンライン診療がなじみやすい。外出が困難などの理由で対面受診が難しい場合が少なくないため、オンライン診療は受診を促す効果が期待されます」。オンライン診療では患者の日常の身だしなみや生活の様子など、「診療室では見えないことも観察できるので、より的確なアドバイスにつながります」という。
◇治療継続率・満足度も同等
慶応大(研究代表者・岸本医師)など国内19の精神科医療機関は、うつ病や不安症などのため精神科で診療を受けた199人を対象に大規模な臨床試験を実施。オンライン診療を用いた治療効果が対面診療と同等であることを昨年12月、発表した。
参加者を対面診療だけ行うグループと、オンライン診療と対面診療を併用するグループに分け、6カ月後の治療成績を比較。併用グループのオンライン診療の割合は平均77%だった。
その結果、生活の質(QOL)の精神面の指標や治療の継続率・満足度などは差がなかった。また、併用グループは対面診療グループに比べ、通院の総時間は約半分に、総費用は約3分の1に減少した。
精神科オンライン診療の診療報酬は4月から初診料、再診料、外来診療料が引き上げられる。岸本医師は「これを機に、精神科オンライン診療の普及が進むでしょう」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/06/13 05:00)
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