話題 2024/12/19 05:00
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唇や額などの他、指や手、腕などの皮膚をむしったり、引っかいたりして出血や傷を伴う「皮膚むしり症」。ハートクリニック(神奈川県鎌倉市)の浅井逸郎医師は「社会生活に支障を来す人もいるため、軽くみない方がいい疾患です」と警鐘を鳴らしている。
社会生活に支障を来す例も
◇うつ病などが併存
むしる部位はさまざまだが、共通するのは無意識にむしる点。子どもや成人でも発症するが、大半は思春期だ。そのためか、「額のにきびをつぶしたりしているうちにむしり行為が止められなくなり、やがて人目を避けたりするほど出血や傷が目立つようになる場合もあります」。うつ病や不安症など他の精神疾患を複数抱えるケースが多いという。
「問題は、傷を気にするあまり学校や会社に行けなくなったり、引きこもったりすることです。また、傷口が化膿(かのう)して感染症を引き起こすことです。重症の場合は自殺に至る例もあります」。親族に皮膚むしり症の人がいるなど遺伝的要因が多いが、不安や退屈な感覚がきっかけになる環境的要因もあるという。
◇神経回路が原因か
精神疾患の中でも比較的新しい概念のため、精神科医の間でも認知度は高くない。出血するほどの傷がある、むしり行為をやめようとしてもやめられない、本人がひどく苦痛を感じている―などが診断基準になるが、ドラッグ使用に伴うむしり行為や自分を醜いと感じる身体醜形症などによるものでないかなど、他の原因と識別する必要がある。
脳の神経回路に何らかの原因があると考えられており、「中でも、無意味な行為をやめさせようとする反応抑制に関わる回路の機能低下と、むしり行為をついやってしまう刺激反応に関わる回路の機能亢進(こうしん)が最も強く関係しているのでは」。
治療はSSRIと呼ばれる種類の抗うつ薬などによる薬物療法や、認知行動療法と呼ばれる精神療法が主体となる。浅井医師は、行動療法の一つである習慣逆転療法(HRT)も効果が期待でき、自身のクリニックでも導入しているという。これは、むしり行為を意識し、自身の行為をコントロールする力を身につけるための方法だ。
また、最近ではアルツハイマー病治療薬メマンチンによる改善効果に関するデータも報告されている。
浅井医師は「生活に支障を来すほど悩んでいたり、家族に1カ月しても消えない傷が目立ったりすることがあれば、迷わず精神科に相談してほしい」と呼びかけている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/09/05 05:00)
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