こちら診察室 皮膚のトラブル

再発繰り返す乾癬
~皮膚にカサカサの赤い発疹~ 【第7回】

 乾癬(かんせん)は、免疫バランスの異常によって起こる慢性的な皮膚の病気です。全身にカサカサした赤い皮疹が繰り返しでき、爪の変形や関節炎を起こすこともある炎症性疾患です。一度発症すると、皮疹が落ち着いている時期があったとしても完治は極めて困難で、長期にわたって悪化と軽快を繰り返します。人にうつる(感染する)ことはありません。

背中のあちらこちらにできた乾癬の皮疹

背中のあちらこちらにできた乾癬の皮疹

 皮膚の角質が厚く硬くなって、表面にポロポロとしたフケのような鱗屑(りんせつ)が付きます。厚くなった角質は銀白色に見えます。かゆみはある場合とない場合があります。皮疹がよく見られるのは、腰、お尻、肘や膝、下腿(かたい)など摩擦や刺激を受けやすい場所です。大きさや形はさまざまで、小さいものから地図状に広がることもあります。

 ◇国内患者40~50万人

 日本の乾癬患者の数は40万~50万人(1000人に4~5人)以上と言われています。もともと、欧米人に多く日本人には少ない病気とされていましたが、近年は増加傾向にあります。欧米とは違って男性の発症頻度が高く、女性の約2倍となっています。発症年齢は、一般的には20~40歳代が多いものの、20歳未満や高齢での発症もまれではありません。

 ◇遺伝と生活環境が影響か

 原因ははっきりと分かっていません。現時点では、もともと発症しやすい遺伝的な要素があり、さまざまな環境因子が複雑に関与することによって免疫バランスの異常が起こるためと考えられています。環境因子としては、生活の乱れ、肥満、ストレス、喫煙、飲酒、感染症などが挙げられます。

 ◇5種類に分類

 乾癬の種類は大きく五つに分けられます。

 代表的な「尋常性乾癬」は全体の約90%を占め、前述のような特徴的な皮疹が現れます。頭皮や爪にも症状が出ることがあります。

 次に多いのが「乾癬性関節炎」で、皮膚の症状に加えて全身のあらゆる関節に炎症、こわばり、痛み、腫れが生じます。アキレス腱(けん)も痛むことがあります。患者数は年々増加しており、最近の調査では乾癬の約10%を占めると言われています。

 風邪などの後に続いて全身に小さな紅斑が現れる「滴状乾癬」や、全身の80%以上が赤くなる「乾癬紅皮症」と呼ばれるものもあります。重症度の高い「膿疱性(のうほうせい)乾癬」は、発熱とともに小さな膿疱が全身の皮膚にでき、再発を繰り返します。

 ◇四つの治療法

 治療は大きく分けて、塗り薬、飲み薬、注射剤(生物学的製剤)の薬物療法3種類と光線療法の合わせて4種類があります。

 1.塗り薬
 塗り薬は治療の基本です。単独で使用する場合もあれば、他の治療法と組み合わせる場合もあります。主に炎症を抑えるステロイド外用薬、皮膚の過剰な増殖を抑えるビタミンD3外用薬、ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を合わせた配合剤があります。

 2.飲み薬
 飲み薬には、免疫バランスを整えて炎症を抑えるPDE4阻害剤、皮膚の過剰な増殖を抑えるレチノイド製剤、過剰な免疫を抑える免疫抑制剤があります。

 3.注射剤
 乾癬の炎症を引き起こす特定の物質の働きを抑えます。他の治療で十分な効果が得られない患者に使用します。

 4.光線療法
 PUVA療法やナローバンドUVB療法、ターゲット型光線療法などがあります。いずれも紫外線を照射することで過剰な免疫を抑える治療方法です。

 治療の目標乾癬の症状を改善し、生活の質を高めることです。患者さんそれぞれに合った一番良い治療法を選択します。早期診断・早期治療が重要ですが、関節症状がある場合は特に注意し、しっかりと治療する必要があります。一度変形してしまった関節は元に戻りません。関節や爪に症状がある場合は皮膚科医に相談してください。また、乾癬の悪化因子である不規則な生活やストレス、喫煙や過度な飲酒を控え、規則正しい栄養バランスの良い食生活を心掛けましょう。(了)

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木村有太子(きむら・うたこ)
 医学博士、順天堂大学医学部皮膚科学講座講師(非常勤)。
 2003年獨協医科大卒。同年順天堂大医学部附属順天堂医院内科臨床研修医、07年同大浦安病院皮膚科助手、13年同准教授、16年独ミュンスター大病院皮膚科留学。21年より現職。
 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本美容皮膚科学会理事、日本医真菌学会評議員、日本レーザー医学会評議員。

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