透析患者の栄養対策
~高リン血症(さやま腎クリニック 池田直史院長)~
腎臓の機能低下が進行し、透析治療を受ける患者が気を付けたい合併症の一つに高リン血症がある。リンはあらゆる食材に含まれ、骨や歯の形成、エネルギー代謝などに関わる重要なミネラルだが、透析患者においてはさまざまなリスクがあるという。さやま腎クリニック(埼玉県狭山市)の池田直史院長に話を聞いた。
タンパク質に対しリンが少ない食材の摂取を意識する
◇良好な栄養状態を維持
リンは、腎臓の働きが低下する透析患者にとっては尿で排せつすることが難しく、体内のリン濃度が上昇してしまう。「カルシウムとリンが結合(石灰化)して血管に付着すると動脈硬化の原因になります。進行すると、脳卒中や心筋梗塞を引き起こすリスクが高まります」と池田院長は話す。
また、高リン血症では、ビタミンDの産生が低下し、骨を溶かす働きを持つ副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌される懸念も。
対策は、透析治療、食事療法、薬物療法の三つが主体となる。「リンの摂取を抑えるだけのかつての食事療法では、特に高齢の患者さんの場合かえって栄養状態が悪くなってしまいます。現在は、良好な栄養状態をいかに維持するかが大事です」
◇リンとタンパク質の比
では、どのような食事療法が望ましいのか。リンは、特に高タンパクな食材に多く含有される。ただ、リンの摂取量を減らそうとタンパク質の摂取を減らすと、栄養状態はもとより筋肉の量や質の低下(サルコペニア)を招きかねない。
鍵を握るのが、タンパク質に対するリンの比率で、それが低い食材を選ぶのがポイントになる。卵白や鶏ひき肉、鶏もも肉やむね肉などが該当する。うどんや食パンも比率は低い。「逆に、清涼飲料水や乳製品、玄米やファストフードはリンの比率が高いので要注意です」
週に数回の人工透析を受けながら、日々の食事にも気を付ける。これを患者だけで行うには限界がある。
「患者さんと医療者が『協働』する医療が大切です。しっかり透析を行い、栄養バランスの良い食事を取り、リン濃度をコントロールする薬をきちんと飲むことが重要です。現在は個々の患者さんのライフスタイルなどに合わせて主治医や看護師、薬剤師、臨床工学技士、管理栄養士などと、その患者さんを一員とする医療チームとなって透析医療を行っていくのが主流です」と、池田院長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/10/16 05:00)
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