体の負担が少ない腹膜透析
~血液透析に比べ、減塩鍵(横浜市立大学 小林竜助教)~
おなかに透析液を入れ腹膜(腹部臓器を覆う膜)を使って老廃物や不要な水分の除去を行う「腹膜透析」。血液透析に比べて体への負担は少ないが、5年前後で血液透析が必要となる場合が多い。腹膜透析の利便性や長く続ける方法について、循環器・腎臓・高血圧内科学が専門の横浜市立大学医学部(横浜市)の小林竜助教に聞いた。
腹膜透析
◇透析療法の3%
腎臓の機能が慢性的に低下する慢性腎臓病(CKD)は、放置すると末期腎不全の状態に至り、透析療法や腎臓移植が必要になる。透析のうち、ポンプで血液を一度体外に取り出し、ろ過してきれいな血液にしてから体内に戻す血液透析が97%を占め、腹膜透析は3%にすぎない。
腹膜透析はおなかに埋め込んだカテーテルから透析液を入れ、腹膜の血管を通して血液中の老廃物や余分な水分が透析液に移行し、ろ過する。1日に1~4回ほど透析液を交換するやり方や、夜間に専用装置で自動的に透析液を交換する方法などがある。医療機関で行う必要がある血液透析に比べ、自宅でできるメリットがある。
ただし、腹膜透析の利用率はまだ低い。「自分で操作することに自信がない患者が多く、実施できる医療機関や医療者が限定されていることなどがあります」
◇減塩群で高い継続率
メリットとしては▽血液透析に比べ、体内の水分や血圧の変動が少ないので、体への負担が少ない▽透析液の出し入れは1回30分ほどかかるが、自宅や職場で行える▽通院は月1~2回で済む―などが挙げられる。
ただし、「平均すると、開始後5年ほどで血液透析を追加したり、血液透析に移行したりする」点が課題だ。
腹膜透析を続けられなくなる主な原因は、体内の水分過剰や感染症。水分過剰については、「腹膜透析開始前からの食塩の取り過ぎによるところが大きく、減塩習慣が身に付いている人は腹膜透析を長く続けられる可能性があります」。透析患者を含むCKD患者では、1日食塩摂取量を6グラム未満に制限することが推奨されている。
小林助教らは、腹膜透析開始前の1日の食塩摂取量が6グラム未満であった減塩群(14人)と6グラム以上の食塩過剰群(28人)で、約4年後の腹膜透析の継続率を比べた。その結果、減塩群の腹膜透析継続率は食塩過剰群に比べ、統計的に明らかに高かった。「腹膜透析を始める前、CKDと診断された時点から1日6グラム未満の食塩制限を守ることが鍵です」。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/12/04 05:00)
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