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高齢者の歯のかみ合わせが良くなかったり、かむ力や飲み込む力が弱まってきたりすると、要介護状態になるリスクが高まる。大阪大学歯学部付属病院(大阪府吹田市)咀嚼補綴(そしゃくほてつ)科の池辺一典准教授は「歯がたくさん残っていても安心は禁物です」と警鐘を鳴らす。
かむ力、飲み込む力の維持が大事
▽大切な「かむ力」
日本老年歯科医学会によると、高齢者の〔1〕口内の細菌数〔2〕口内の乾燥度〔3〕かみ合わせの力(咬合=こうごう=力)〔4〕舌や唇の運動機能〔5〕舌による圧力〔6〕食べ物をかみ砕く機能〔7〕飲み込む機能―のうち3項目に問題があれば「口腔(こうくう)機能低下症」に当たり、注意が必要だ。
70歳を超えると、舌や唇の運動機能や舌圧が低下して、自分の歯が残っていてもしっかりかめない、飲み込みにくいといった状態になりやすい。咀嚼・嚥下(えんげ)機能の低下は、脳卒中などの発症と関係していることも分かっている。
咬合力について調査している池辺准教授は「咬合力が弱まると、かみごたえのある肉や繊維質の多い野菜などが食べづらくなります。動物性タンパク質やビタミン類などの不足による栄養の偏りは、虚弱や脳卒中、心筋梗塞のリスクを上昇させます」と指摘する。
▽歯以外にも関心を
咬合力には歯だけではなく筋力も関係する。池辺准教授によると、咬合力が弱い人は歩行速度が遅く、全身の筋力低下が見られるという。
また、口内の清潔さを保つためには適度な量の唾液の分泌が必要だ。唾液の量が不十分だと口内の自浄作用が損なわれ、細菌数が増えて誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こすことがある。
「口中の衛生は歯科で指導を受ければ改善できますし、歯のかみ合わせも入れ歯などで調整できます。自分の歯を大切にすることはもちろんですが、かむ力や飲み込む力を維持できているかどうかを意識することが、高齢者の健康維持には重要です」と池辺准教授は話している。
(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/01/02 06:00)
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