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鼠径(そけい)ヘルニアは「脱腸」のことで、足の付け根の鼠径部から臓器や腹膜が飛び出た状態だ。大人の患者が多いが、仕事を休めない、下腹部の病気で恥ずかしいからと治療をためらいがちだ。鼠径ヘルニアに詳しい執行クリニック(東京都新宿区)の執行友成院長は「悪化させないうちに早めに手術をしてください」と呼び掛ける。
鼠径ヘルニアの種類
▽筋トレで発症も
大人の鼠径ヘルニアは40代以降で、重い物を運んだり、立ち仕事をしたりする人に多い。ダイエットのため急に激しいトレーニングを行った拍子に、強い腹圧がかかって臓器が押し出されるケースもある。
初期には足の付け根周辺に軟らかい膨らみができて、痛みや違和感がある。膨らみを指で押さえると引っ込むが、立ち上がったり、くしゃみをしたりすると大きくなる。執行院長は「鼠径部の筋膜が加齢とともに弱って隙間ができて、そこから腹膜が押し出されて袋状になり、その中に腸などの臓器が出たり入ったりします」と説明する。
鼠径ヘルニアは、できる位置によって、〔1〕鼠径部のやや外側が膨らむ外鼠径ヘルニア〔2〕鼠径部の恥骨寄りの内側が膨らむ内鼠径ヘルニア〔3〕鼠径部の下の太ももが膨らむ大腿(だいたい)ヘルニア―の3種類がある。外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアは男性、大腿ヘルニアは女性に多い。
「二つ以上のヘルニアを合併することもあります。飛び出した腸が戻らなくなる『嵌頓(かんとん)』と呼ばれる状態になると、臓器が締め付けられ、命に関わる危険もあります」と執行院長。
▽日帰り手術も可能に
鼠径ヘルニアは自然に治ることはないため、症状が見つかったら早期に手術を行う。以前は、膨らんだ部分を切開し飛び出した臓器などを戻し、周囲の筋膜を寄せてふさいでいたが、手術した部分が引っ張られ痛い上、組織が元に戻るまで1週間から10日間ほどの入院が必要だった。
現在の主流はポリプロピレン製のシートで筋膜を補強する方法だ。周囲の組織が引っ張られることがないため術後の痛みはほとんどない。手術時間も大幅に短縮され、入院も必要なくなった。同院では患者の状態や年齢によって、小さな穴から腹腔(ふくくう)鏡を挿入して手術する方法と組み合わせることもある。
鼠径ヘルニアは放置していた期間が長いほど再発しやすい。執行院長は「手術で治せる病気なので、ためらわず受診してほしい」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/01/06 06:00)
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