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真面目で仕事に追われていた夫が、定年と同時に朝から酒を飲むようになり、ズルズルと依存症に陥ってしまう―。定年後の飲酒は、時として本人の体ばかりでなく、心までむしばんでしまう。原宿カウンセリングセンター(東京都渋谷区)の信田さよ子所長は「定年後の人生は、夫にとっても妻にとっても未体験です。定年前からライフプランを立てておくことが重要です」と話す。
誰かと一緒に飲む、週末だけにするなど、ルールを決めて
▽居場所づくりが重要
現役で働いているころは、飲酒をしても、翌日の仕事や体のことを考えて歯止めがかかる。ところが、定年を迎え歯止めがなくなると、酒量が増え、半年もたたないうちに、アルコール依存症に陥ってしまうケースが少なくない。現役時代と違って、少量のアルコールで酔いつぶれてしまうなど、体質も変わってくる。
信田所長は「定年後の飲酒問題は、引退後のライフスタイルについて、定年前に夫婦で話し合っていないことが一番の原因です」と指摘する。
回避するには、定年後も定期的に出掛けられる場所をつくっておくべきだという。「定年前から趣味の講座や勉強会に参加するなど、定年後にできることを見つけておくのです」と信田所長。それを、夫婦で相談して決めてほしいという。
▽まずは専門家に相談を
飲酒の仕方にも目を向けたい。お酒が好きで、普段から1人で飲むという人は危険信号だ。アルコールを飲むときは、夫婦や友人など必ず複数で、毎日ではなく週末だけにするなど、一定のルールを決めておくとよい。
同時に、アルコールが体に与える影響をよく理解することも必要だ。信田所長は「認知症やがんなど、多くの病気のリスクを高めるだけでなく、向精神作用のある大麻や覚せい剤と同じように依存性があることを知っておくべきです」と強調する。
2014年から施行されたアルコール健康障害対策基本法により、各自治体に相談窓口が設置されている。保健所や精神保健福祉センターでも相談できる。
信田所長は「普段から、家族や周囲と円満な人間関係を築いている人は、定年後も家族を苦しめるような飲み方はしないはず。人生において、人間関係よりも酒が大切だと思ったら、依存症の黄色信号だと自覚してください」と注意を喚起している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/02/03 06:00)
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