一流の流儀 「信念のリーダー」小久保 裕紀WBC2017侍ジャパン代表監督
(第2回)投げやりと開き直りは違う
侍たちに掛けた言葉
「良かったら選手の手柄。悪かったら監督が責任をかぶって、選手に火の粉がかからないようにする。それも監督の仕事。だから、負けたら『小久保が悪い』でいいのです」。小久保裕紀さんがこう語ったことがある。プレミア12の韓国戦での敗戦で、「小久保の失敗」という見出しがスポーツ紙に出た時は精神的にこたえた。小久保さんが気を取り直した後の言葉だろう。
WBC練習試合で投球練習を見守る小久保監督(左)と権堂投手コーチ=2017年3月19日、米グレンデール
敗戦後、問題を洗い出したチームは一から出直し、本番に向けて準備を整えた。一方で、侍ジャパンに対するバッシングを選手も感じていた。WBC終了後に出版した「開き直る権利」(朝日新聞出版)は、そんな選手たちの動揺を抑えるために、ミーティングで小久保監督が繰り返し伝えた言葉を集めている。「何しろ、WBCが始まるまでは『史上最弱の侍ジャパン』と言われていました。僕はマスコミの重箱の隅をつつくような質問の受け答えにも慣れて、どんと来いと思っていましたが、選手たちも負けたらたたかれます。新聞を読んで、ボロクソに書かれていれば動揺しますよね」
そこで小久保さんは、1週間に3、4回、「開き直る権利」を選手たちに説いた。勝負が始まったら必ず、「もうどうにでもなれ」と開き直らなければならない時が来る。その時、勝負の女神がほほえんでくれるのはどういう選手か。それは、準備し、準備をし尽くした人間だ。そういう選手が開き直った時に初めて、勝利の女神がほほ笑む。何の準備もしなかった選手が開き直っても、女神はほほ笑まない。それはただの「投げやり」だ。
「投げやりと開き直りは違う。その開き直れる権利を得るために、きょうの試合で自分は何ができるのか。外野はうるさいけれど、それだけを考えて徹底して追い求めてくれ、と言ったのです」
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(2018/07/31 10:00)