一流の流儀 「信念のリーダー」小久保 裕紀WBC2017侍ジャパン代表監督

(第2回)投げやりと開き直りは違う
侍たちに掛けた言葉

 小久保さんにとっては、指導者の経験がないということもあった。最初は断っていた侍ジャパン監督の要請を最終的に受けたのは、「誰もができるチャレンジではないのだから、やってみよう」という覚悟を持ってのことだった。

WBC準決勝の日本対米国。安打を放った内川聖一選手を迎える小久保監督=2017年3月21日、米ロサンゼルス
 自ら代表選手と首脳陣を集めるところから始めた。一人ひとり食事に誘っては、くどき落とす。日本ハムの中田翔選手やジャイアンツの坂本勇選手ら20代の選手にはほぼ強制的に「自分が監督をしている限り、ずっと声を掛け続けるからお前も諦めろ、と承諾してもらった」と言う。30代のベテラン選手には別の気を使った。

 「『両立できるか』とまず意向を聞いて『国を背負うのはしんどい』という選手は最初から公にしませんでした。なぜなら、ジャパンを断ったというニュースが出て煩わせないためです。青木宣親選手(現在ヤクルト)は自分で志願してきてくれたのでありがたかったですね」

 首脳陣についても考え抜き、大学1年の時の4年生で当時は話などもってのほか、あいさつしかできなかった奈良原浩さんをヘッドコーチに、野球を知り尽くし、抜群の勝負勘を持つ権藤博さんを投手コーチに起用した。小久保さんは、監督の考えの及ばないところをサポートし、良いチームをつくってくれたと感謝する。

 全エネルギーを注ぎ、監督として日本代表を率いた1278日間。2017年3月22日、米ロサンゼルスで行われたWBC決勝ラウンドの準決勝、侍ジャパンは米国に1対2で敗れて決勝進出を逃し、小久保ジャパンは終幕した。

 「『人生はチャレンジすることに意味がある』ということは分かっていたのですが、それを経験して、その思いがさら強くなりました。過去の失敗を、あれがあったおかげでと思えた時に、成長できるのではないかと思います。逆に、つらい時のことを忘れたら、また同じ失敗をする。『小久保の失敗』の見出しは、自分への戒めとして、これほどふさわしいものはなかったのです」(了)

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一流の流儀 「信念のリーダー」小久保 裕紀WBC2017侍ジャパン代表監督