女性アスリート健康支援委員会 スケートに懸けた青春、月経の悩みは
心技体整え、勝負のバンクーバー
会心の500入賞、涙の1000―吉井小百合さん
スピードスケート女子短距離で世界と戦った吉井小百合さんにとって、2度目の五輪となった2010年のバンクーバー大会は、メダルを懸けた勝負の大舞台だった。その目標にあと一歩まで迫る5位入賞を果たした500メートルのレースは、心技体が整った会心のレースとして、今も心に残る。
バンクーバー五輪500メートルの2回目で力走する吉井小百合さん。5位に入賞した=2010年2月、カナダ・バンクーバー(時事)
五輪前年には、メダルが手に届くところに見えていた。09年3月、ワールドカップ(W杯)ソルトレーク(米国)大会の1000メートルで、吉井さんは自身の日本記録を0秒35更新する1分14秒05を出して2位。五輪まで1年を切り、本番を見据えた年間スケジュールに沿ってトレーニングを続けた。つらい月経痛に苦しんでいた吉井さんはこの時期、低用量ピルの服用を始めていた。月経痛の症状を改善すると同時に、月経が来る時期を試合や練習日程に合わせてコントロールするのが目的。吉井さんは国立スポーツ科学センターの婦人科医の指導を受け、トレーニングや体づくりと同様に年間を通した計画を立て、思い通りに月経が来るよう、継続的な調節を行った。
◇低用量ピルを計画的に服用
「月経をコントロールすることによって、いつ生理が始まるか明確にできることも大きかった」と語る吉井小百合さん
「オリンピックまでの1年間のどこでどうやって低用量ピルを使うか、試合の時にどんなパフォーマンスができるくらいの体に持っていけばよいのかを考えた。練習や試合をしながら様子を見て、五輪の年にはもっと細かく、正確性を持ってコントロールの計画を立てられるようにと、医師とも相談しながら服用しました」コンディションは明らかによくなった。月経痛が緩和されただけではない。「体だけでなく、気持ちの面でも変わりました。月経をコントロールすることによって、いつ生理が始まるということを、自分の中で明確にできることも大きかったと思います」
ピルを飲むと、副作用が出る場合もある。服用するかどうかは、あくまで選手側の選択だ。特にジュニア選手は、保護者や指導者ら周囲の関係者ともよく相談した上で、判断することが必要になる。吉井さんの場合、トップアスリートとして国立スポーツ科学センターの医師に処方してもらえる安心感もあり、月経痛の痛みを少しでも解決できれば、という思いが副作用などへの不安を上回った。
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(2019/01/05 07:00)