女性アスリート健康支援委員会 スケートに懸けた青春、月経の悩みは

心技体整え、勝負のバンクーバー
会心の500入賞、涙の1000―吉井小百合さん


 ◇仲間のエールに燃え、攻めのレース

 バンクーバー五輪の500メートルの2回目を滑り終え、ガッツポーズする吉井小百合さん=2010年2月、カナダ・バンクーバー(時事)
 五輪シーズンがいよいよ幕を開けた。10年1月、短距離の世界女王を決める世界スプリントがあり、吉井さんは日本人では三宮恵利子選手以来の総合2位に入った。五輪でのメダル獲得への期待が膨らむ中で迎えた本番の大舞台。25歳のスプリンターは、最初に出場する500メートルの滑りで弾みをつけ、得意の1000メートルでメダルを狙うというシナリオを思い描いた。その500メートルで予想を上回る好成績を収めた要因の一つには、チームメートの激励があったと感じている。

 所属先の日本電産サンキョーの同僚である男子代表の長島圭一郎選手と加藤条治選手が女子500メートルの前日に行われた男子500メートルで銀メダルと銅メダルに輝いた。いよいよ女子500メートルの当日、選手村付近ですれ違った長島選手から「俺たちがいい流れをつくったんだから、ちゃんと続いてこいよ」と声をかけられた。長島選手と握手を交わした吉井さんは、奮い立った。

 「私も絶対やってやるという気持ちにさせてもらえた。自分がメダリストになったという思いよりも、『お前も頑張れ』というエールを送ってくれる。素晴らしいアスリート精神を感じました」。体調にも問題はなく、心技体そろった状態で目の前のレースに集中できた。

 インスタートの1回目のレースは38秒56の好タイム。アウトスタートの2回目は38秒43で、合計タイム1分16秒99。見事な滑りで、銅メダルまであと一歩に迫る5位。惜しくも表彰台には届かなかったが、「トリノと違って攻めるレースができた」という会心のレースに、喜びと心地よい疲労感に浸った。

 ◇涙のち晴れやか、結婚して出産

 バンクーバー五輪で1000メートルを滑り終え、後輩の小平奈緒選手(右)と握手する吉井小百合さん=2010年2月、カナダ・バンクーバー(時事)
 勝負のあやは微妙だ。メダルを狙った1000メートルは結局、15位。吉井さんは集中力を乱して、思うようにスピードに乗り切れず、不本意な成績に終わった。「自分の体調をきちんと合わせられなかった悔しさ、自分に勝てなかった悔しさが大きくて、一晩中泣きました」。その後の1500メートルも振るわず、喜びと涙の両方を味わって、2度目の五輪は終わった。

 25歳のスケーターには、悔しさを晴らすために3度目の五輪を目指すという選択肢もあった。だが、次第に別の思いが芽生えた。「メダルという結果にはたどり着けなかったけれど、これまでの20年くらいの競技人生のプロセスは誇りに思える。自分だけでなく、学校や地元の企業など地域に支えられ、育てられて、ここまでスケートをさせてもらったら、もう満足かな、違う自分も見てみたいな。そう思ったんです」

 シーズン終了後に現役を引退した。1年間のコーチ生活を経て会社を離れ、結婚、出産。母となり、次代の子どもたちには、よりよい環境でスポーツに親しんでもらいたいと、心から願う。日本産科婦人科学会や日本スポーツ協会などがつくる「女性アスリート健康支援委員会」のサポーターとして、自らが月経の問題に悩んだ体験を話すのも、その思いからだ。(了) 


◇吉井小百合さんプロフィルなど

◇つらい月経痛、レース後に意識もうろう (スケートに懸けた青春、月経の悩みは・上)

◇長い人生考えて体づくりを (スケートに懸けた青春、月経の悩みは・下)


  • 1
  • 2

女性アスリート健康支援委員会 スケートに懸けた青春、月経の悩みは