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日中の眠気対策パワーナップ 第2回
日中に眠気を感じる人はもちろん、午後に集中力の低下を感じている人にお勧めなのが、日中の短時間の昼寝です。現在では「パワーナップ」と呼ばれることが多く、この習慣が、眠気に悩まされる人の多い「短眠国家」の日本を救うでしょう。

パワーナップとは、15~30分程度の短い仮眠のことです。米国コーネル大学の社会心理学者ジェームス・マース先生が、1998年に著書で紹介しています。これこそが睡眠時間が短いと悩む人の多い、短眠国家の日本を救う方法だと思います。図は、広島大学の堀忠雄先生が行った実験結果です。黒い太いバーは、昼寝をした時間帯を示しています。赤線がこの時間帯に昼寝をしていない人、青線が昼寝をした人です。横軸は時刻を表しています。
そして上から本人が感じている眠気、実際の計算能力、脳波の一種であるアルファ(α)波の量を示しています。このα波はリラックスしている時に出るもので、量が多いとうたた寝状態になっていることを示すため、眠気を客観的に表すとされています。
◇20分間の昼寝がお勧め
これらの結果から、昼休みに20分間の昼寝をすることは、午後の眠気を軽減し、計算能力を上げ、客観的な眠気の指数となるα波を減らすことが分かりました。
ですから、慢性的に睡眠が不足している日本人にはパワーナップは有効だと言えるでしょう。三菱地所は30分間のパワーナップで、日中の集中力が向上し、眠気が軽減したと報告しています。
また、福岡県の進学校である県立明善高等学校では、昼食後の15分間のパワーナップで、大学入試センターの成績が1.15倍から1.20倍に上昇したと報告しています。
睡眠時間が短い、睡眠の質が悪い…。どちらの問題であっても「昼間の眠気」に悩まされている人はぜひ一度お試しください。(了)

遠藤 拓郎(えんどう たくろう)
スリープクリニック調布院長。米スタンフォード大学医学部客員教授。1987年東京慈恵会医科大学卒業。後、米スタンフォード大、スイス・チューリッヒ大、米カルフォルニア大へ留学。帰国後東京慈恵会医科大助手などを経てスリープクリニックを開業し、不眠症治療に携わる。その一方で 慶應義塾大学医学部特任教授を経て2023年より現職。睡眠や不眠症に関する著書多数。近著に「最強の昼寝法 ~日本人の処方箋~」(扶桑社)。YouTubeでも情報発信。
(2025/05/28 05:00)
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