「医」の最前線 AIに活路、横須賀共済病院の「今」
〔最終回〕学生時代の苦い経験
リーダーシップの方法を見直す
急患の依頼がきても待たせたあげく断る。患者は診てやるという偉ぶった態度。地元でも評判の悪かった横須賀共済病院は今、人工知能(AI)の導入による働き方改革で全国的な注目を集めている。すべての救急車を受け入れ、患者数が増えれば、職員の仕事は軽減されるどころか増える一方だ。余裕がなければ患者の立場にたったケアはできない。そこで目をつけたのが、AIの導入だ。病院の危機を乗り切り、先を見据えて新しいことに挑戦する長堀薫院長の原動力とは?
インタビューに応える長堀薫院長
◇商家で英才教育を受ける
長堀氏は東京都江東区亀戸にある家具店の長男として生まれ、元小学校教師の父親から徹底的な英才教育を受けて育った。「小学校から帰ると、父親からつきっきりで勉強の指導を受けていました。亀戸は下町で近所の子たちが缶蹴りをして遊んでいるような環境でしたから、完全に周囲から浮いた存在でした」
当時では珍しかった中学受験をして開成中学に入学。中高時代を男子校で過ごした。中学生になると家具の運搬や店番のアルバイトにも励んだ。「親からは、言葉遣いから立ち居振る舞いまで、とにかく人に好印象をもたれるよう、いろいろなことをたたき込まれました」
◇虫垂炎がきっかけ
子どもの頃、虫垂炎になりかけたことが医師をめざすきっかけになった。「手術はしなくてすんだのですが、医者という職業に漠然とした憧れを感じました」。父親も喜んで長堀氏の医学部進学を応援してくれたという。
父親は実家の家具店を継ぐために教師の道を断念せざるをえなかった。「弱いところは決して見せなかったから、本当のところはわかりませんが、僕に夢を託したのかもしれません」と長堀院長は話す。
「中高時代は運動も苦手だし、暗いし、人と話はできない、みたいな目立たない学生でした」。下町の小学校では常にトップで目立つ存在だったが、開成に入ると優秀な学生が周りじゅうにいた。当時は劣等感に苛まれたこともあったという。
「いつの間にか、人と比べることがなくなりましたね。常にやりたいことをしていますし、目標に向かって目の前のことに精いっぱい取り組んでいるせいでしょうか」
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(2019/05/31 11:00)