「医」の最前線 AIに活路、横須賀共済病院の「今」

〔最終回〕学生時代の苦い経験
リーダーシップの方法を見直す

医学部のテニス部キャプテンを務めた長堀薫院長

医学部のテニス部キャプテンを務めた長堀薫院長

 ◇強権的なリーダーシップ

 医学部受験は順調に進み、横浜市立大学医学部に入学。高校2年生のマラソン大会で上位に入ったことから運動に目覚め、医学部ではテニス部のキャプテンを務めた。

 「医学部のテニス部だから、もともと弱い部だったんです。それで強くしようと思って、練習を強制して出席をとったりして、部員の自由を奪ってしまいました。そしたら、部員が辞めて人数が減ってしまって、下級生も入ってこなくなってしまって。結局、もとよりも弱くなってしまいました」

 これが、強権的なリーダーシップは通用しないこともあるという原体験となった。

 ◇一流の組織を目指して

 強いリーダーに頼らず、自立する組織であり続けるために、長堀氏が最終的に目指しているのは、日本生産性本部の日本経営品質賞をとることだ。

横須賀共済病院の理念

横須賀共済病院の理念

 一昨年、日本版医療MB賞の「プロフィール認証」を受審、来年は日本経営品質賞のSクラス審査を受ける。顧客視点で経営全体を運営し、自己革新を通じて新しい価値をつくり続けることのできる組織に対して与えられる賞で、企業の受審が多い。病院ではまだ全国で10施設に満たない。

 「一流の組織に対して贈られる賞なので、より魅力のある病院になることを目指して受審したい」と長堀院長は話す。

 数々の経営改革を経て3年ほどたったとき、開業した外科の先輩医師が「患者さんから『いい病院を紹介してくれてありがとう」と初めて言われたよ。以前は医者の態度が悪くて、職員も愛想悪いって評判悪かったぞ」と話してくれたという。

 1日に600人の入院患者、1700人の外来患者が訪れる病院で、すべての人に満足してもらうことは難しい。しかし、職員一人ひとりが自立して、進化できる組織であれば、夢ではない。AIの導入もその一助となるだろう。患者にも職員にもやさしい病院づくりにむけた、さらなる挑戦が続いている。(医療ジャーナリスト・中山あゆみ)

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