こちら診察室 女性医療現場のリアル〜悩める患者と向き合い、共に成長する日々〜
みんなが婦人科を受診する理由は?
今回は婦人科受診の重要性についてお話しします。抵抗を感じる方も多いかもしれませんが、体に違和感を覚えたら早めの受診が大切です。女性の体はそれぞれ異なります。自分の体を大切にするためにも、勇気を持って一歩を踏み出しましょう。
◇違和感あれば早めに
例えば、腹痛や不正出血、月経不順、異常なおりものなどの症状が表れた場合、早期発見と早期治療が健康な生活を支えるカギとなります。自己判断せずに、専門医の診察を受けることで安心して生活できます。
ここからは、実際にどのような理由で婦人科を受診されている方がいるのか、具体的な事例を見てみます。AさんとBさんの体験談を紹介します。
健康管理は家族全体で行う(イメージ画像)
◇不安乗り越え母娘で健康チェック
50代のAさんは、9年前から定期的に乳がんと子宮がんの検診を受けるために通院。2年ごとに受診し、早期発見・早期治療を心掛けています。Aさんの20代の娘さんは、子宮頸部(けいぶ)異形成と診断され、定期的にフォローを受けています。このように、母と娘が一緒に健康を意識している姿勢はとても素晴らしいですよね。検診結果は簡潔に伝えようとしていたこともあり、いつも短い診察時間でした。
最初の頃、Aさんは私を怖い先生だと思っていたようですが、SNSのインスタグラムを通じて私のキャラクターや人柄を知り、次第に親しみを持って声を掛けてくださるようになりました。こうしたコミュニケーションが、患者さんとの信頼関係を深めるきっかけになっています。
ある日の受診の際、Aさんは「フェムゾーンを見たら、いぼを発見した。病気かもしれない」と不安を抱えていました。私はその不安をしっかり受け止め、「大変な病気ではないので心配は要らない」と伝えました。この言葉で、Aさんは少し安心した様子でした。
受診の日は、ちょうど娘さんの誕生日だったようで、「これで不安なく、心から娘の誕生日を一緒に祝える」と話すAさんの表情が心に残っています。母親としての責任感を持ちつつ、親子で一緒に健康を守ろうとする姿勢は他の患者さんにも良い影響を与えるでしょう。健康管理は家族全体で行うことが大切だというメッセージを、Aさんの体験を通じて多くの方に伝えていきたいと思います。
◇介護と更年期乗り越えた7年間
Bさんは約7年間にわたり、木曜日の仕事後に定期的に通院しています。木曜日が近づくと、私も「Bさんが来る日だな」と頭に浮かぶほど、彼女の通院日として定着しています。
Bさんは医療関係の仕事をしていて、日々多忙な生活を送っています。肩凝りや目の疲れ、寝不足といった悩みを抱えながらも、常にきちんとしている印象です。一方で、親の介護や家族のみとりといったつらい経験も経て、現在は更年期を迎えています。特に、お母さまをみとった後は不眠に悩まされることが多くなったそうです。親しい家族の喪失体験が心身に影響を及ぼすのは当然です。そうした状況にあっても、ゆっくりと乗り越えようとしているBさんの姿には学ぶべきことが多々あります。
彼女は「睡眠剤には頼りたくない」と強く思っているため、プラセンタ注射を月に2〜3回受け、漢方薬も飲んでいます。とはいえ、夜中に目が覚め、亡き母の形見となった睡眠剤を飲む場合もあると聞き、心を深く動かされました。過去の思い出と向き合いながら自分の健康を維持するために努力しているのです。
「しんどくても、今しかできないことは全力でやる」と前向きに日々を過ごす姿勢は、周囲の人々にとっても励みとなるでしょう。Bさんのように、困難な状況に直面しながらも自分を大切にし、前を向いて進む大切さを多くの人に伝えていきたいと感じます。
自分の体の状態をしっかりと理解することが大切だ(イメージ画像)
◇女性の体は十人十色!ケア不要の場合も
女性の体は非常に多様で、個々の状態やニーズに応じて異なります。膣(ちつ)周りに触れた際に痛みや違和感がなく、また乾燥も見られない場合、その状態は正常と言えます。このような場合には、特別なケアは基本的に必要ありません。最近では、膣ケアが推奨される風潮が広がっていますが、実際には不要な場合も多く見受けられます。
大切なのは、自分の体の状態をしっかりと理解することです。まず、自分の体の声に耳を傾けましょう。自分自身の体を知れば、必要以上の過剰なケアを避けられます。無理にケアを行うと、逆に体にストレスを与えたり、トラブルを引き起こしたりする原因になりかねません。適切な方法で健康を維持する意識を持ちましょう。
婦人科の受診に抵抗を感じていた方も、少しはハードルが低くなりましたか? 安心して通えるクリニックは、患者さんにとって非常に大切な場所です。私たちはそのためのクリニックづくりに力を入れていくべきだと考えています。院内の雰囲気やスタッフとの相性など、自分が頼りたくなるようなクリニックをぜひ見つけてください。(了)
沢岻美奈子院長
沢岻美奈子(たくし・みなこ)
琉球大学医学部を卒業後、産婦人科医として25年以上の経歴を持つ。2013年1月、神戸市に女性スタッフだけで乳がん検診を行う沢岻美奈子女性医療クリニックを開院。院長として、乳がんにとどまらず、女性特有の病気の早期発見のための検診を数多く手掛ける。女性のヘルスリテラシー向上に向け、診察室での患者とのやりとりや女性医療の正しい知識をインスタグラムで毎週配信している。
日本産科婦人科学会専門医、女性医学学会認定医、マンモグラフィー読影認定医、乳腺超音波認定医、オーソモレキュラー認定医。漢方茶マイスター。
(2024/11/15 05:00)
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