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性感染症と女性の健康
~正しい予防法と検査の重要性~ 【第10回(最終回)】

 性感染症は性的接触によって感染する可能性がある病気のことで、女性の健康に深刻な影響を与える場合があります。感染していても症状がすぐに表れないことが多く、知らぬ間に他の人に感染を広げてしまうリスクもあります。適切な予防方法を知り、早期に検査を受けましょう。

 今回のコラムでは、女性が特に注意すべき性感染症の種類や症状、予防法について詳しく解説します。不妊症の原因となるケースもあるため、少しでも異常を感じたら早急に対応してください。

おりものの量や臭いをチェック(イメージ画像)

おりものの量や臭いをチェック(イメージ画像)

 ◇おりものに注意

 女性が性感染症に罹患(りかん)すると、体のいろいろな部分に変化が表れることがあります。特に、おりものの状態が変わるのは性感染症の兆候の一つです。普段より量が増えたり、異常な臭いがしたりする場合は注意しましょう。かゆみや痛み、性行為中の違和感なども感染を疑うべきサインです。

 ◇代表的5種

 性感染症にはさまざまな種類がありますが、女性が特に感染しやすいものが幾つかあります。ここでは、クラミジア、淋病(りんびょう)、トリコモナス、カンジダ、尖圭(せんけい)コンジローマの五つについて説明します。

 1. クラミジア

 若い女性に多く見られ、性交渉を通じて感染します。初期段階ではほとんど症状が表れない場合が多いものの、放置すると骨盤内感染症不妊症などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
 症状としては、おりものの異常や下腹部の痛み、排尿時の痛みなどが挙げられます。感染の有無を確かめるには医療機関での検査が必要です。多くの場合、適切な抗生物質による治療で完治します。

 2. 淋病

 クラミジアと同じく性的接触によって感染します。感染力が非常に強く、罹患した人の多くが症状を自覚します。女性の場合、初期症状としてはおりものの増加や異常な色、排尿時の痛み、下腹部の痛みが挙げられます。
 進行すると、骨盤内感染症不妊症を引き起こすリスクが高まります。かかってしまった場合は医療機関での検査と抗生物質による治療が必要で、早期に治療を受ければ重症化を防げます。

 3. トリコモナス

 原虫と呼ばれる小さな寄生生物が原因で起こります。クラミジアや淋病に比べて症状が比較的分かりやすく、かゆみやおりものの増加、泡状のおりものが出るといった特徴があります。
 症状が出た時点で医療機関を受診すれば適切な治療が行えます。抗生物質による治療が一般的で、早めの対応が大切です。

 4. カンジダ

 真菌と呼ばれるカビの一種が原因で、特に女性に多く見られます。カンジダはもともと女性の体内に常在している菌ですが、ストレスやホルモンバランスの乱れ、免疫力の低下などがきっかけで異常に増殖し、感染症を引き起こします。強いかゆみやおりものの異常(特に白くてクリーム状)、外陰部の赤みや腫れなどの症状が出ます。
 性行為によっても感染することがありますが、生活習慣や体調の変化も影響します。治療には抗真菌薬を用います。再発しやすいため、原因の根本的な見直しが重要です。

 5. 尖圭コンジローマ

 ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされ、性器やその周辺にいぼができるのが特徴です。いぼは小さくて柔らかく、鶏冠状やカリフラワー状の形をしています。感染初期には症状が出ないケースが多く、いぼが成長すると違和感やかゆみをもたらすことがあります。
 HPVは非常に一般的なウイルスであり、性交渉の経験がある人の多くが一度は感染する可能性がありますが、感染しても必ずしもコンジローマになるわけではありません。治療はいぼの除去が中心で、手法としては凍結療法、レーザー治療、外科的切除などが一般的です。HPVに対する予防接種も効果的で、特に若い女性に推奨されます。

定期的な検査で性感染症のリスクを管理(イメージ画像)

定期的な検査で性感染症のリスクを管理(イメージ画像)

 不妊症や母子感染のリスクも

 上記で少し触れましたが、性感染症は放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性があり、特に注意が必要なのが不妊症のリスクです。クラミジアや淋病などは初期の段階で適切な治療を受けないと、骨盤内感染症を誘発することがあります。この疾病が進行すると、卵管が炎症を起こしたり、閉塞(へいそく)状態になったりし、妊娠する能力に大きな影響を与えます。

 性感染症は母子感染のリスクもあり、妊娠中の女性が感染すると、赤ちゃんにも影響が及ぶ可能性があります。そのため、妊娠を考えている女性や妊娠中の女性は性感染症の予防と早期検査を怠らないようにしてください。自覚症状がなくても、医療機関で定期的に検査を受けるようお勧めします。また、少しでも異常を感じたり、パートナーに性感染症の疑いがあったりする場合には、迅速な検査を推奨します。

 検査は痛みがなく時間をそれほど必要としない簡単なものが多く、結果が早く出る場合も少なくありません。早期に感染を発見し、適切な治療を行うことで不妊症やその他の合併症のリスクを低減できます。性感染症の検査は恥ずかしいことではなく、自分の健康を守るためにも必要な行動です。

 ◇効果高いコンドーム

 性感染症を予防する最も効果的な方法の一つは、性行為の際にコンドームを正しく使用することです。コンドームは原因となる病原体が体内に侵入するのを防ぐバリアーとして機能し、自分自身とパートナーを守ります。使用期限内のものを選び、性交渉の最初から最後までしっかりと装着してください。また、性交渉の前にコンドームが破損していないか確認しましょう。

 パートナーとのコミュニケーションも重要です。お互いの健康を守るために、コンドームの使用について話し合い、双方が安心できるようにしましょう。

 性感染症は誰にでも起こり得る病気ですが、正しい知識と予防策でリスクを大幅に減らせます。少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。(了)

沢岻美奈子(たくし・みなこ)
 琉球大学医学部を卒業後、産婦人科医として25年以上の経歴を持つ。2013年1月、神戸市に女性スタッフだけで乳がん検診を行う沢岻美奈子女性医療クリニックを開院。院長として、乳がんにとどまらず、女性特有の病気の早期発見のための検診を数多く手掛ける。女性のヘルスリテラシー向上に向け、診察室での患者とのやりとりや女性医療の正しい知識をインスタグラムで毎週配信している。
 日本産科婦人科学会専門医、女性医学学会認定医、マンモグラフィー読影認定医、乳腺超音波認定医、オーソモレキュラー認定医。漢方茶マイスター。

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