下肢の慢性創傷(難治性潰瘍)

 下肢はヒトのからだのなかでも血流が障害されやすく、創傷の治りがわるい部位です。また、足底(足の裏)は体重がかかるため、圧迫によって治りにくくなります。
 
1 動脈性潰瘍
 動脈は組織に酸素と栄養素を運搬するはたらきをもっています。酸素や栄養素は創傷を治すための「材料」ですから、動脈の血流がわるくなると、慢性創傷(難治性潰瘍)を生じやすくなります。
 動脈硬化症などの疾患では動脈の内腔が狭くなるため、下肢の血行がわるくなります。このように、動脈の血行障害によって発生する潰瘍を動脈性潰瘍と呼びます。
 動脈性潰瘍は足のゆびや踵(かかと)に発生することが多く、しばしば痛みや冷感を伴います。

2 静脈性潰瘍
 静脈は体中の細胞で発生した二酸化炭素や老廃物を心臓まで運搬するはたらきをもっています。下肢は重力に逆らって血液を心臓へ戻す必要があるため、静脈に負担がかかって障害が起こります。
 静脈性潰瘍はうっ滞性潰瘍とも呼ばれており、しばしば静脈瘤に伴って発生します。潰瘍はおもに下腿に発生し、色素沈着がみられます。

3 糖尿病性足潰瘍
 糖尿病はインスリンのはたらきがわるくなり、血糖値が上昇する疾患です。血糖値の上昇が持続すると、血管や神経の障害、腎機能障害、免疫力低下などさまざまな合併症を起こします。このような合併症が原因となって、足潰瘍が発生します。
 糖尿病性足潰瘍は感染しやすく、組織損傷の進行が速いのが特徴です。また、眼の病変を合併するため、患者さん自身が自分の足を観察できず、発見が遅れることがあります。


(執筆・監修:埼玉医科大学 教授〔形成外科・美容外科〕 時岡 一幸)
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