日本ロレアル株式会社
ヒト皮膚の生体力学的な変化とその感覚認知への影響について
世界最大の化粧品会社ロレアルグループの研究開発部門であるロレアル リサーチ&イノベーション(所在地:パリ、フランス、副経営責任者:バーバラ・ラベルノ)は、ヒト皮膚の生体力学的変化とその感覚知覚への影響について、所属研究員アン・ポッター*とスタンフォード大学ラインホルト・H・ダウスカールト教授のチームが共同で行なった最新研究(1), (2)を発表しました。この研究では、洗顔後などに感じる皮膚の「ツッパリ感」について、その感覚が生起し認知されるメカニズムを解析し、角層の力学的変化が感覚受容器を活性化し、神経シグナルに変換する仕組みと、個人の主観的知覚を理解するための定量的な枠組みを明らかにしています。上記の研究内容詳細を3月21日に東京で開催されるロレアルグループの日本発ブランド「タカミ」の製品発表会にて、アン・ポッターが来日し、概要を説明いたします。
皮膚は複数の層で構成されていますが、角質は皮膚の最も外側に存在する層で、皮膚細胞が分化(a)した角質細胞と脂質で形成されています。外部からの異物の侵入を防ぎ、物理的な刺激や化学的ダメージから皮膚を保護し、体内からの水分の損失を制御する役割があります。健やかな皮膚のためにはバリア機能が強く、水分バランスが保たれ、正常なターンオーバーを示すといった、適切にケアされた角質が重要な要素になります。洗顔後の皮膚のツッパリ感は、実際に皮膚水分量計で測定された水分量や経表皮水分損失による測定で測定された角質層のバリア機能よりも、表皮の感覚受容体(c)によって感知される乾燥の自己認識や、硬さなどの角質層の生体力学的特性(b)に関係していました。このツッパリ感は、適切な保湿剤で皮膚をケアすることで緩和することができることがわかりました(1)。In vitro試験(d)、in silicoモデリング(e)、およびin vivo自己評価試験(f)を組み合わせた解析により、角層の生体力学的特性(b)の変化から生じる張力(硬さ)が感覚受容体を刺激し、それがツッパリ感として知覚されることが示されました(2)。
ロレアルR&Iではこれらの研究結果を、健やかで美しい皮膚のための製品開発に応用していきます。
注:
a:細胞が組織として特殊化し、形態や機能の特異性が確立していくこと
b:生物の構造の力学的な性質。この場合は柔らかさ、あるいは伸張性
c:感覚刺激を受けて神経を活性化する器官。この場合は物理的刺激(物理的な力、あるいは力による変形)の受容器
d:試験管内での(in vitro)試験という意味で、生物の細胞や組織を使用した試験のこと
e:シリコンチップ内での(in silico)という意味で、コンピューターを使用し作成したモデルを用いて実験や測定に関連するシミュレーション計算をおこなうこと
f: 生体での(in vivo)試験という意味で、この場合はボランティアのモニターによる官能評価試験のこと
参考資料:
1.Ross Bennett-Kennetta, et al., “Sensory neuron activation from topical treatments modulates the sensorial perception of human skin”, PNAS Nexus, 2023, 2, 1-12
2.Sebastian Hendrickx-Rodriguez, et al., “From decoding the perception of tightness to a clinical proof of soothing effects derived from natural ingredients in a moisturizer”, Int J Cosmet Sci. 2022;00:1-14.
■アン・ポッター(Anne POTTER PhD.)
【経歴】
グランゼコール エコール・ノルマル・シュペリウールにおいて化学物理学の博士号を取得後、ロレアル入社。皮膚生物物理学、皮膚生物学、微生物叢および皮膚病理学における横断的な知識を開発し、in vitro、デジタル、および臨床的なアプローチを結びつけ、学術機関と共同研究をリード。40以上の論文、ポスター、口頭発表、および研究書の共著、および20以上の特許を持っています。
ロレアルグループについて
ロレアルは115年にわたり美容・化粧品業界のリーダーとして、世界の消費者の美への希求とニーズに応えることに専念してきました。当社のパーパス「世界をつき動かす美の創造」は、社会に対しても、環境に対しても、サステナブル、インクルーシブ、倫理的かつ寛大な形で美を通じて貢献してゆくという私たちの美への姿勢を包括的に表現するものです。37の国際ブランドを初めとする多様で幅広いブランドポートフォリオと、持続的発展と環境を守るための取り組みである「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」プログラムを通じ、美の無限の多様性を賛美し、世界のすべての人々に最高水準の品質、有効性、安全性、誠実さ、責任をお届けします。当社は、9万人を超える従業員を擁し、地理的にもバランスの取れた拠点展開と、すべての流通網(eコマース、マスマーケット、百貨店、薬局、美容室、ブランドおよび旅行小売)における販路を有しています。2023年のグループ売上高は411億8千万ユーロにのぼります。世界11ヵ国に20の研究開発と研究開発拠点を置き、4,000人以上の科学者と6,500人を超えるデジタル人財を擁するロレアルは、美の未来を創造し、ビューティーテクノロジーを推進してゆくことを重要視しています。詳細については、こちらをご参照ください。
https://www.loreal.com/en/mediaroom
ロレアル リサーチ&イノベーション ジャパンについて
日本における研究開発は 1983 年にスタートし、現在、日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンター(所在地:川崎市、所長:アミット・ジャヤズワル)として、戦略的なイノベーション拠点としての役割を担っています。数ある外資系化粧品企業においても、もっとも歴史ある研究開発部門であり、いち早く日本の文化、歴史、社会を深く理解し、200 名以上の研究員が、ラグジュアリーブランドをはじめ、グループの各ブランドおよび様々なカテゴリーの製品開発を行っています。代表的なブランドはランコム、シュウ ウエムラ、キールズ、イヴ・サンローラン、ケラスターゼ、ロレアル プロフェッショナル、メイベリン ニューヨーク、TAKAMIなど。
https://www.loreal.com/ja-jp/japan/articles/science-and-technology/beauty-research-and-innovation
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(2024/03/12 14:00)
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