「脳腸皮膚相関」の概念は1930年に提唱されたもので、精神状態・腸・皮膚に相互に関連する因子によって炎症が惹起され、さまざまな皮膚疾患を引き起こすとされる。尋常性痤瘡(以下、痤瘡)はうつ病などの精神疾患との関連についての研究もあるが、消化性疾患との関連に焦点を当てたものはほとんどない。台湾・Taichung Veterans General HospitalのChen YW氏らは台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)を用いて後ろ向きに検討。痤瘡患者は消化性疾患の有病率が高く、痤瘡の重症度が高いほど消化性疾患を合併するリスクが高いことをJAAD Int(2024; 18: 62-68)に報告した。
年齢および経口抗菌薬使用で層別化して検討
Chen氏らは、NHIRDを基に同定した1997〜2013年に皮膚科を3回以上受診した痤瘡18万5,491例と、1:2でマッチングした非痤瘡患者37万982例について、それぞれ12歳未満、12〜25歳未満、25歳以上の3群に分けるとともに、痤瘡の重症度についてテトラサイクリン系経口抗菌薬(ミノサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン)の長期使用(30日超)の有無で層別化。専門医による診断に基づく消化性疾患〔消化性潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)、胃腸炎、胃食道逆流症(GERD)、便秘〕の有病率を調査し、痤瘡およびその重症度と消化器合併症の関連について、ロジスティック回帰分析を用いてオッズ比(OR)と95%CIを算出して検討した。
重症度が高いほど消化性疾患リスクが高い
痤瘡の主な患者層は12〜25歳未満が最も多く、次いで25歳以上、12歳未満で、いずれも女性の割合が多かった。痤瘡群では対照群に比べ消化性疾患の有病率が高い傾向が見られた。
痤瘡と消化性疾患の関連について検討したところ、12歳未満の経口抗菌薬非長期使用群では消化性潰瘍(OR 5.43、95%CI 2.28〜12.92)、IBS(同9.52、3.24〜28.00)、胃腸炎(同5.11、2.37〜11.05)、便秘(同8.03、3.70〜17.44、いずれもP<0.001)、12歳未満の経口抗菌薬長期使用群ではIBS(OR 8.05、95%CI 8.05〜24.10、P<0.001)、胃腸炎(同3.61、1.67〜7.84、P=0.001)、便秘(同15.48、4.64〜51.59、P<0.001)との有意な関連が認められた。
12〜25歳未満群では経口抗菌薬長期使用の有無にかかわらず消化性潰瘍(長期使用あり:OR 1.81、95%CI 1.66〜1.98、なし:同1.36、1.25〜1.47)、IBS(長期使用あり:同2.31、2.08〜2.58、なし:同1.64、1.48〜1.81)、胃腸炎(長期使用あり:同1.92、1.71〜2.16、なし:同1.48、1.34〜1.64)、便秘(長期使用あり:同2.36、2.12〜2.64、なし:同1.70、1.54〜1.89、全てP<0.001)との有意な関連が認められ、25歳以上例でも同様だった。
いずれも経口抗菌薬長期使用を要する中等度〜重度の痤瘡例ほど消化性疾患との関連がより顕著だった。
以上から、Chen氏らは「痤瘡患者は消化性疾患を合併するリスクが高く、経口抗菌薬の長期使用を要する例では消化性疾患の合併リスクがより顕著だった。中等度〜重度の痤瘡患者に対しては、包括的ケアとして消化器専門医への受診勧奨が有用な可能性がある」と結論。本研究の限界として、NHIRDの性質上、家族歴や病変部位、経口抗菌薬使用以外の重症度に関する情報や、肥満度、食習慣など生活習慣に関する情報、自費診療下での治療に関する臨床情報(米国や欧州で難治性痤瘡に用いられるisotretinoinによる治療)が得られず検討できなかったことを挙げた。
(編集部)