カスタマーハラスメントがメンタルヘルスに与える影響―上司の支援がストレス軽減の鍵に
株式会社セーフティネット
調査結果から見る高ストレスリスクとその緩和策―カスタマーハラスメント対策における職場支援の重要性
株式会社パソナセーフティネットは、株式会社ベターオプションズ(代表取締役:宮中大介氏)との共同調査を通じて、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)が従業員のメンタルヘルスに及ぼす影響と、その影響を上司の支援が緩和する可能性について分析しました。
調査には445名の従業員が参加し、職業性ストレスチェックに加え、過去半年間のカスハラ経験に関する質問を実施。
その結果、カスハラを経験した従業員は、経験がない従業員と比較して高ストレス者の割合が顕著に高いことが明らかになりました。この傾向は性別、年代、職種、役職といった要因に左右されることなく確認されています。
また、上司と気軽に話せる環境が整っている場合、カスハラ経験の有無に関係なく高ストレス者の割合に有意差が見られませんでした。これにより、上司の支援が従業員のメンタルヘルスの維持に重要であることが示されています。
今回の調査結果により、従業員がカスハラに遭遇した際、管理職による「ラインケア」が精神的負担を軽減する可能性が示唆されました。
***************************
【調査方法】
社会福祉法人A様にご協力頂き、2024年8月から9月に実施された職業性ストレス簡易調査票によるストレスチェックに過去半年間のカスタマーハラスメント経験を問う設問を追加して実施頂きました。調査に対する回答者は、445名でした。
【結果】
ストレスチェックにおいては一定の基準に該当した場合に高ストレス者と判定され、医師、保健師等のストレスチェックの実施者が認めれば医師による面接指導を受けることが出来ます。高ストレス者に該当した従業員はその後病気休職や退職しやすい※2ことが明らかになっています。
今回の調査結果からカスタマーハラスメント経験の有無とストレスチェックの高ストレス者に該当した従業員の割合(=高ストレス者比率)の関係を分析した結果、カスタマーハラスメントを経験していた従業員の方が、経験していない従業員に比べて、高ストレス者比率が高いことが分かりました(図1)。
この比率の差を統計的に検討したところ、統計的に意味のある差がありました。なお、カスタマーハラスメント経験と高ストレス者比率の関係には回答者の性別、年代、職種、役職等の違いが影響している可能性があります。
そこで、それらの違いを考慮した統計分析も併せて実施しましたが、やはり、カスタマーハラスメントを経験していた従業員の方が、高ストレス者比率が高いという結果となりました。
図1 カスタマーハラスメント経験と高ストレス者の関係
カスタマーハラスメントを防ぐためには、顧客や利用者に対する周知、顧客対応フローの見直し等が考えられますが、カスタマーハラスメントの発生を100%避けることは難しいと考えられます。そのため、現場の従業員がカスタマーハラスメントに遭った場合に、現場の管理職が親身になって話を聞く、感情を受け止める等のいわゆるラインケアを実施して、従業員のメンタルヘルスの悪化を防ぐことが重要と考えられます。
今回の調査データにおいて、上司と気軽に話せるかどうか※3によって回答者を2群に分けて、カスタマーハラスメント経験の有無によって高ストレス者比率に差があるか検討しました(図2)。
その結果、上司と気軽に話せない場合にはカスタマーハラスメント経験の有無で高ストレス者比率に統計的な差がありましたが、上司と気軽に話せる場合にはカスタマーハラスメント経験と高ストレス者比率に統計的な差がありませんでした。性別、年代、職種、役職等の違いを考慮した統計分析も併せて実施しましたが、同様の結果となりました。
図2 上司の支援を考慮したカスタマーハラスメント経験と高ストレス者の関係
【考察】
今回の調査結果からは、カスタマーハラスメントを経験している従業員は、経験していない従業員に比べて、高ストレス者比率が高いことが分かりました。さらに、従業員が上司と気軽に話せると感じている場合には、カスタマーハラスメント経験の有無によって高ストレス者比率に統計的な差がないことが分かりました。
この結果は、第一に、職場においてカスタマーハラスメントが従業員のメンタルヘルスの悪化、ひいてはその後の病気休職や退職につながりやすいことを示していると考えられます。第二に、上司が部下と気軽に話せる、相談しやすい関係性を築くこと、すなわち上司による部下に対するラインケアの実践が、カスタマーハラスメント経験による従業員のメンタルヘルスの悪化を防ぐことが出来る可能性を示していると考えられます。
現在様々な業界においてカスタマーハラスメント対策が進んでいますが、カスタマーハラスメント経験が従業員のメンタルヘルスの悪化につながらないようにするためには、カスタマーハラスメント対応方針の策定やマニュアルの見直し等に留まらず、従業員がメンタルケアを求めた場合に相談出来る専門の相談窓口、カスタマーハラスメントに遭った従業員を現場の管理職が適切にケアするためのラインケア研修等の施策が望まれます。
株式会社パソナセーフティネットでは昨今重視されるカスタマーハラスメント対策の重要性に鑑み、サービスを展開しています。
今回の調査設計、データ分析は、株式会社ベターオプションズ代表取締役・慶應義塾大学総合政策学部特任助教の宮中大介氏よりアドバイスを受けて実施いたしました。
株式会社ベターオプションズ https://better-options.jp/
【本文注釈】
※1 東京都都議会 東京都カスタマーハラスメント防止条例
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/09/11/documents/18_01.pdf
※2 ストレスチェックに回答した労働者を追跡調査したKachi et al.(2020)では高ストレス者がその後の退職しやすいことが明らかになっており、Tsutsumi et al.(2018)では高ストレス者がその後病気休職しやすいことが明らかになっています。
Kachi, Y., Inoue, A., Eguchi, H., Kawakami, N., Shimazu, A., & Tsutsumi, A. (2020). Occupational stress and the risk of turnover: a large prospective cohort study of employees in Japan. BMC Public Health, 20, 1-8.
Tsutsumi, A., Shimazu, A., Eguchi, H., Inoue, A., & Kawakami, N. (2018). A Japanese Stress Check Program screening tool predicts employee long‐term sickness absence: a prospective study. Journal of occupational health, 60(1), 55-63.
。
※3 「上司とどのくらい気軽に話ができますか?」に対する回答のうち「非常に」「かなり」と回答した人を上司と気軽に話が出来る群、「多少」、「全くない」と回答した人を上司と気軽に話が出来ない群として集計している。
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調査結果から見る高ストレスリスクとその緩和策―カスタマーハラスメント対策における職場支援の重要性
株式会社パソナセーフティネットは、株式会社ベターオプションズ(代表取締役:宮中大介氏)との共同調査を通じて、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)が従業員のメンタルヘルスに及ぼす影響と、その影響を上司の支援が緩和する可能性について分析しました。
調査には445名の従業員が参加し、職業性ストレスチェックに加え、過去半年間のカスハラ経験に関する質問を実施。
その結果、カスハラを経験した従業員は、経験がない従業員と比較して高ストレス者の割合が顕著に高いことが明らかになりました。この傾向は性別、年代、職種、役職といった要因に左右されることなく確認されています。
また、上司と気軽に話せる環境が整っている場合、カスハラ経験の有無に関係なく高ストレス者の割合に有意差が見られませんでした。これにより、上司の支援が従業員のメンタルヘルスの維持に重要であることが示されています。
今回の調査結果により、従業員がカスハラに遭遇した際、管理職による「ラインケア」が精神的負担を軽減する可能性が示唆されました。
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【調査方法】
社会福祉法人A様にご協力頂き、2024年8月から9月に実施された職業性ストレス簡易調査票によるストレスチェックに過去半年間のカスタマーハラスメント経験を問う設問を追加して実施頂きました。調査に対する回答者は、445名でした。
【結果】
ストレスチェックにおいては一定の基準に該当した場合に高ストレス者と判定され、医師、保健師等のストレスチェックの実施者が認めれば医師による面接指導を受けることが出来ます。高ストレス者に該当した従業員はその後病気休職や退職しやすい※2ことが明らかになっています。
今回の調査結果からカスタマーハラスメント経験の有無とストレスチェックの高ストレス者に該当した従業員の割合(=高ストレス者比率)の関係を分析した結果、カスタマーハラスメントを経験していた従業員の方が、経験していない従業員に比べて、高ストレス者比率が高いことが分かりました(図1)。
この比率の差を統計的に検討したところ、統計的に意味のある差がありました。なお、カスタマーハラスメント経験と高ストレス者比率の関係には回答者の性別、年代、職種、役職等の違いが影響している可能性があります。
そこで、それらの違いを考慮した統計分析も併せて実施しましたが、やはり、カスタマーハラスメントを経験していた従業員の方が、高ストレス者比率が高いという結果となりました。
図1 カスタマーハラスメント経験と高ストレス者の関係
カスタマーハラスメントを防ぐためには、顧客や利用者に対する周知、顧客対応フローの見直し等が考えられますが、カスタマーハラスメントの発生を100%避けることは難しいと考えられます。そのため、現場の従業員がカスタマーハラスメントに遭った場合に、現場の管理職が親身になって話を聞く、感情を受け止める等のいわゆるラインケアを実施して、従業員のメンタルヘルスの悪化を防ぐことが重要と考えられます。
今回の調査データにおいて、上司と気軽に話せるかどうか※3によって回答者を2群に分けて、カスタマーハラスメント経験の有無によって高ストレス者比率に差があるか検討しました(図2)。
その結果、上司と気軽に話せない場合にはカスタマーハラスメント経験の有無で高ストレス者比率に統計的な差がありましたが、上司と気軽に話せる場合にはカスタマーハラスメント経験と高ストレス者比率に統計的な差がありませんでした。性別、年代、職種、役職等の違いを考慮した統計分析も併せて実施しましたが、同様の結果となりました。
図2 上司の支援を考慮したカスタマーハラスメント経験と高ストレス者の関係
【考察】
今回の調査結果からは、カスタマーハラスメントを経験している従業員は、経験していない従業員に比べて、高ストレス者比率が高いことが分かりました。さらに、従業員が上司と気軽に話せると感じている場合には、カスタマーハラスメント経験の有無によって高ストレス者比率に統計的な差がないことが分かりました。
この結果は、第一に、職場においてカスタマーハラスメントが従業員のメンタルヘルスの悪化、ひいてはその後の病気休職や退職につながりやすいことを示していると考えられます。第二に、上司が部下と気軽に話せる、相談しやすい関係性を築くこと、すなわち上司による部下に対するラインケアの実践が、カスタマーハラスメント経験による従業員のメンタルヘルスの悪化を防ぐことが出来る可能性を示していると考えられます。
現在様々な業界においてカスタマーハラスメント対策が進んでいますが、カスタマーハラスメント経験が従業員のメンタルヘルスの悪化につながらないようにするためには、カスタマーハラスメント対応方針の策定やマニュアルの見直し等に留まらず、従業員がメンタルケアを求めた場合に相談出来る専門の相談窓口、カスタマーハラスメントに遭った従業員を現場の管理職が適切にケアするためのラインケア研修等の施策が望まれます。
株式会社パソナセーフティネットでは昨今重視されるカスタマーハラスメント対策の重要性に鑑み、サービスを展開しています。
今回の調査設計、データ分析は、株式会社ベターオプションズ代表取締役・慶應義塾大学総合政策学部特任助教の宮中大介氏よりアドバイスを受けて実施いたしました。
株式会社ベターオプションズ https://better-options.jp/
【本文注釈】
※1 東京都都議会 東京都カスタマーハラスメント防止条例
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/09/11/documents/18_01.pdf
※2 ストレスチェックに回答した労働者を追跡調査したKachi et al.(2020)では高ストレス者がその後の退職しやすいことが明らかになっており、Tsutsumi et al.(2018)では高ストレス者がその後病気休職しやすいことが明らかになっています。
Kachi, Y., Inoue, A., Eguchi, H., Kawakami, N., Shimazu, A., & Tsutsumi, A. (2020). Occupational stress and the risk of turnover: a large prospective cohort study of employees in Japan. BMC Public Health, 20, 1-8.
Tsutsumi, A., Shimazu, A., Eguchi, H., Inoue, A., & Kawakami, N. (2018). A Japanese Stress Check Program screening tool predicts employee long‐term sickness absence: a prospective study. Journal of occupational health, 60(1), 55-63.
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※3 「上司とどのくらい気軽に話ができますか?」に対する回答のうち「非常に」「かなり」と回答した人を上司と気軽に話が出来る群、「多少」、「全くない」と回答した人を上司と気軽に話が出来ない群として集計している。
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(2024/11/22 09:20)
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