治療・予防

65歳になったら耳鼻咽喉科へ
~「聴こえ8030運動」(愛媛大学 羽藤直人教授)~

 加齢に伴い聴力が低下すると、うつ病や認知症の発症リスクが高まることが知られている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、80歳になっても30デシベル(ささやき声程度の音の大きさ)の聴力維持を目指す「聴こえ8030運動」を2024年9月から本格的に始動させた。

 同学会の理事で、愛媛大学医学部(愛媛県東温市)耳鼻咽喉科・頭頸部外科の羽藤直人教授に話を聞いた。

「聴こえのセルフチェック」

「聴こえのセルフチェック」

 ◇加齢性難聴は病気

 現在、80歳で30デシベル聴こえる人の割合は30%以下。8030運動では、若い頃からの聴覚ケアの重要性を啓発するため、加齢性難聴の周知と耳鼻咽喉科での定期的な聴力検査、生活習慣の見直しなど、早期予防と対策を呼び掛ける。「加齢性難聴は病気という認識を持ち、聞こえづらさに気付いたら、耳鼻咽喉科で診察を受けましょう」

 加齢性難聴を放置すると、社会生活にさまざまな影響を及ぼす。コミュニケーションがうまくいかなくなって人との会話がおっくうになり、接触を避けることで社会的孤立、さらにはうつ状態、認知症につながる可能性がある。

 難聴は、認知症の後天的な要因の中で最も大きな危険因子だ。早期の補聴器装用による認知症の予防効果や生活の質の改善も多数報告されている。「難聴が進行してからでは補聴器がうまく使えない人も。自覚症状がなくても、65歳になったら耳鼻咽喉科で聴力検査を受けましょう」

 補聴器相談医に

 同学会は、学会が認定した全国約5000人の補聴器相談医をホームページで紹介している。診察や聴力検査の結果、補聴器が必要であれば、専門の補聴器販売店を紹介し、患者に合った補聴器を連携して選び、アフターケアにも対応する。

 「補聴器は慣れるまで2~3カ月はかかります。最近は、多くの販売店が無料レンタル期間を設けており、補聴器相談医や言語聴覚士、補聴器の選定・調整をする補聴器技能者らのサポートを受けながら、納得のいく補聴器を購入するとよいでしょう」

 難聴は若年層でも無縁ではない。大音量の音楽や騒音にさらされる環境は、難聴を悪化させる。「ヘッドホンやイヤホンで音楽を聴くなら週40時間までにとどめ、1時間聴いたら10分休憩しましょう」

 同学会が推奨する「聴こえのセルフチェック」も活用したい。「テレビやラジオの音が大きいのは難聴のサインです。騒音にさらされる家族の難聴リスクも高めますので、周囲の人も耳鼻咽喉科受診の声掛けをお願いします」と羽藤教授は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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