治療・予防

痛む脚、歩行に支障も-変形性股関節症
負荷を減らし、筋力つけて

 脚の付け根にある大腿(だいたい)骨と骨盤をつなぐ股関節は、日常生活のさまざまな動作を担っている。変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、骨同士がぶつかって変形してしまう病気で、20代から発症するケースもあるという。JR東京総合病院(東京都渋谷区)整形外科の深谷英世担当部長は「変形性股関節症の進行を遅らせたり発症を防いだりするには、股関節周りの筋力を落とさないことが必要です」と話す。

軟骨がすり減り、骨が変形している(矢印部分)(JR東京総合病院提供)

 ▽軟骨のすり減り

 股関節が、屈伸やひねる動作などの多様な動きに対応できるのは、骨と骨の間にクッションとなる軟骨があるからだ。変形性股関節症では、この軟骨が加齢や関節の病気、スポーツや先天的な原因ですり減ってしまう。初期の頃は、朝起きた直後や長時間座っていて動きだしたときに、太ももの前や脚の付け根に痛みを感じるが、しばらくすると気にならなくなる。深谷担当部長は「進行すると、関節内の炎症から常に痛みが生じるようになり、末期になると骨同士がぶつかって変形し、関節が思うように動かせなくなってしまいます」と説明する。中高年の女性に多く、高齢者の場合は、痛みのせいで歩かなくなると急速に筋力が弱り、全身の健康状態が悪くなることもあるという。

 変形性股関節症の原因で一番多いのは、臼蓋(きゅうがい)形成不全だ。「股関節の骨盤側は、大腿骨の丸い頭をすっぽりと覆っていますが、臼蓋形成不全では生まれつきこの覆い方が浅いため、関節に負担がかかり、変形性股関節症を発症しやすくなります」と深谷担当部長。

 ▽強い痛みは手術も検討

 変形性股関節症の治療では、飲み薬で痛みを軽減させながら、リハビリで股関節周りの筋力アップを行う。関節の動きを助けて進行を遅らせ、痛みの軽減につなげていくためだ。骨が変形して痛みが強く、日常生活に支障が出る場合は、患者の年齢や状態に応じて手術を検討する。同院では、患者への負担を最小限にした人工関節を埋め込む手術を行っていて、手術後はスポーツも可能だという。

 変形性股関節症の予防について、深谷担当部長は「体重を増やし過ぎないこと。しゃがんで作業をするような姿勢は、股関節に負担がかかりやすいので避けた方がよいでしょう。過度なウオーキングやジョギングも股関節を酷使するので注意が必要です」とアドバイスする。痛い部分をかばっていると、他の関節まで悪くしてしまうので、症状がある場合は早めの受診を心掛けたい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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