医学部トップインタビュー

研究力で世界をリード
産学連携を積極的に推進する-大阪大学医学部

 大阪大学医学部の源流は、1838年に蘭学者の緒方洪庵が開いた適塾にさかのぼる。全国から集まった塾生の中には、福沢諭吉、大村益次郎、長與専斎、橋本左内など歴史に名を残す人物が数多くいた。自由闊達(かったつ)な学風や実力主義は、現在の医学部に受け継がれ、数々の研究成果を世に送り出している。金田安史医学部長(取材時)は「天然痘のワクチンをいち早く導入して、治療に役立てた洪庵のように、自分たちの研究成果を疾患の診断や治療に応用し、患者さんのために役立てることのできる世界のリーダーに育ってほしい」と学生たちに期待する。

インタビューに応える金田安史医学部長

 ◇中高生からリクルート

 「卒業生には世界の医学・医療をリードするようなリーダーになってほしい。それがわれわれの一番大きな願いです」と金田医学部長は話す。同大学医学部が求めるのは、論理的思考力を持った学生。将来、リーダーになれる資質を見抜くため、入学試験では数学や理科を重視する。

 「医療ではデータから診断を導き、診断をもとに一瞬で最適な治療の優先順位をつける。論理的な思考力がなければ、医師としてもリーダーとしてもやっていかれないからです」

 面接では、予備校の指導が徹底して、受験テクニックにたけた学生が増えてきた。このため、毎年、入試形態を見直し、適宜更新して、学生の資質を見極める努力を続けている。

 「優秀な学生に『来てください』と待っていてはダメなんです。どんどんリクルートしないと」と金田医学部長。地域の進学校に出向き、高校1~2年生を対象とした説明会を開くほか、中学生を対象に父母同伴の見学会も開催している。

 ◇早くから研究に触れさせる

 教育カリキュラムでは、入学後の早い段階で基礎医学講座への配属を全国に先駆けて行っている。リサーチマインドを育むために、近年、このプログラムを導入する大学は多い。「約3カ月間、基礎研究だけに集中できる時間を設け、自分の行った研究をきちんと人に伝える訓練をして、論理的な思考と発表能力を養っています」

 3年次以降に選択できる「MD研究者コース」では、放課後や土日に独自のテーマで研究を行う。卒業後そのまま大学院へ進んで、研究者への道を歩んでほしいという期待をこめて作ったコースだが、コース履修後は多くの学生が初期研修を選択するのが現実だ。

大阪大学吹田キャンパス

 「専門医制度ができて、医学博士の取得を軽視する風潮がありますが、やはり将来、現場のリーダーになるためには、研究を通して論理的な思考を高めておくことが大切です」

 関連病院の協力もあって、初期研修を終えてから大学院に戻る学生が増えてきた。一時は定員割れしていたが、現在は172人の定員をオーバーするほどの入学希望者がいる。

 国際的に活躍できる人材を育成するため、2016年度からは専門課程に医学英語を導入した。「医学部の学生の英語力は、入学時には学内でもダントツに高いのに、だんだんと落ちてしまいます。リスニングやスピーキングも含め、コミュニケーションにも困らない語学力を身に付けてもらいます」

 海外の大学への短期留学も推奨しており、毎年、50~60人の学生が参加している。協定校は現在29校。海外から臨床実習に参加する学生もいて、在校生にも良い刺激になっている。

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