治療・予防

糖尿病関連腎臓病
~定期的に尿検査を(順天堂大医学部付属順天堂医院 合田朋仁先任准教授)~

 糖尿病のさまざまな合併症の一つで、腎機能が低下する糖尿病関連腎臓病(DKD)。最近では、患者の高齢化や医療の進歩を背景に、従来と異なるタイプのDKDが注目されている。

 順天堂大医学部付属順天堂医院(東京都文京区)腎・高血圧内科の合田朋仁先任准教授は「DKDが進行すると最終的には腎不全に至ります。糖尿病と診断されたら、定期的に検査を受け腎障害の発症や進展を防ぐことが重要です」と指摘する。

糖尿病患者の尿中アルブミン値の目安

糖尿病患者の尿中アルブミン値の目安

 尿たんぱくは正常だが

 糖尿病になると、高血糖状態が続き全身の血管がダメージを受ける。腎臓では、細い血管が集まる糸球体(しきゅうたい)が血液中の老廃物をろ過するが、糸球体が壊れると血液中のたんぱく質(アルブミン)が尿中に漏れる。1日に30ミリグラム以上のアルブミンが尿中に排出される場合、腎障害が疑われる。

 合田先任准教授によると、典型的なケースでは糖尿病発症から5~10年後に尿中のアルブミンが増加し、1日300ミリグラムを超える頃から腎機能が低下して腎不全に至る場合が多い。しかし近年では、尿中アルブミン値は300ミリグラム未満であっても腎機能が低下する「非典型例」も増加しているという。この原因には「高齢化や、糖尿病治療やその合併症の治療の進歩が関与しています」。

 ◇自覚症状は乏しい

 尿中のアルブミンが一定以上増加すると腎機能低下を意味し、末期腎不全に至った場合は人工透析などの治療が必要になる。毎年新たに透析を開始する患者の約4割はDKDだ。

 DKDは自覚症状が乏しいため、発見が遅れがちだという。このため、糖尿病と診断された場合には定期的に検査を受けることが重要になる。「DKDについては尿検査の結果が重要です。糖尿病でわずかでもアルブミン尿が見られた場合は、すぐに治療を開始する必要があります。また、尿検査を通じてDKD以外の慢性腎臓病(CKD)が発見される可能性もあります」

 DKDの早期治療では厳格な血糖と血圧の管理が基本。これによりアルブミン尿の増加を抑え、腎機能の低下を抑える効果が期待できる。近年、DKDに対する治療薬も増えており、選択肢が広がっている。

 合田先任准教授は「アルブミン尿が検出されたり腎機能が低下したりする前から治療を始めることが重要です。アルブミン尿が増えてきた段階では、腎機能の回復は難しくなるためです」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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