治療・予防

新薬増え、9割が落ち着く
~高齢者のアトピー性皮膚炎(東京都健康長寿医療センター 種井良二部長)~

 かゆみを伴う赤みやぶつぶつなどが表れるアトピー性皮膚炎。子どもに多い病気だが、高齢者にも見られることが分かってきた。その背景と治療法について、東京都健康長寿医療センター(板橋区)皮膚科の種井良二部長に聞いた。

高齢者のアトピー性皮膚炎

高齢者のアトピー性皮膚炎

 ◇60歳以上の1~3%

 アトピー性皮膚炎は、炎症を抑える塗り薬で良くなっても、ぶり返して長い期間続く。

 これまでは思春期、遅くとも40代までには自然に治まるとされてきた。その理由として、種井部長は「外界とのバリアーとなる皮膚の機能や、皮膚炎を起こすアレルギーや免疫の過剰反応が体の成長に伴って整うためと考えられます」と説明する。

 しかし、1980年代以降、先進国では子どもだけでなく成人の患者も増え、60歳以上で人口の約1~3%に見られるようになった。▽子どもの頃から続く▽いったん治まったが、成人期に再発▽高齢になって初めて発症―などのケースで、種井部長の研究では、高齢での発症が約6割と最も多かった。

 高齢患者が増えた理由ははっきりしないが、「家屋の気密性などの環境要因で子どものアトピー性皮膚炎が増え、アレルギーの素因を持ったまま成人になっている」とみる。

 一般的に、高齢者は皮膚が乾燥してかゆくなりやすい。また、皮膚を清潔に保ち、薬を正しく塗るといった基本的なケアも不十分になりやすい。肝臓、腎臓の持病やその薬の副作用が相まってかゆみが強まることも。

 ◇新薬増える

 「皮膚科専門医のもとで適切な治療を続けましょう」と種井部長。近年、皮膚炎やかゆみに関わるタンパク質の働きを阻害する注射薬や飲み薬などの新たな治療薬が増えた。「高齢者の難治性の皮膚炎も、9割の人は数カ月の治療で落ち着くようになりました」。塗り薬で効果が不十分な中等症から重症患者に勧めているという。

 特に注射薬(デュピルマブ、トラロキヌマブなど)は、高齢者にも比較的安全に使用できると報告されている。注射に伴う皮膚の赤みなどの副作用に注意する。薬剤費が月に約5万~12万円(健康保険の適用で患者負担はその1~3割)程度かかる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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