ダニ媒介脳炎
~ワクチン接種で予防可能(おひげせんせいのこどもクリニック 米川元晴院長)~
ダニ媒介脳炎ウイルスに感染したマダニにかまれることで発症する「ダニ媒介脳炎」。国内では1993年以降、北海道で患者が発生しており、急性脳炎を起こして死亡するケースもあった。
おひげせんせいのこどもクリニック(札幌市豊平区)で、海外渡航者向けの渡航外来も行う米川元晴院長は「欧州や北海道などの流行地域で、居住や滞在、登山などの野外活動をする場合は、個々人の感染リスクに応じてダニ媒介脳炎ワクチンの接種を検討しましょう」と話す。

感染リスクがある行動例
◇北海道外でも警戒を
マダニは野山や公園などに生息し、主に春から秋にかけて地面、低木や草から動物や人に移り、吸血する。マダニは、室内に生息してアレルギーの原因となるダニとは異なる。
「北海道以外の国内でも、げっ歯類などでダニ媒介脳炎ウイルスへの感染が確認されています。北海道以外でも山林などでは、これらの動物に吸血してウイルスに感染したマダニにかまれるリスクがあります」
ダニ媒介脳炎の潜伏期間は1~2週間で、ウイルスの型によって症状が異なる。国内に広く分布する極東亜型に感染した場合、多くは無症状だが、頭痛や発熱などが起こり、悪化すると、けいれんやまひなどの脳炎症状が出る場合がある。
「発症した場合、致死率は20%以上、生存者の30~40%にまひなどの後遺症が残ります。高齢者ほど重症化しやすく、子どもでも20~30%が脳炎を起こす危険な感染症です」
◇1~3カ月前に相談
マダニにかまれた場合は、皮膚科や外科で処置を受け、その後数週間は体調の変化に注意し、発熱などの症状があれば内科や小児科を受診する。「急性脳炎による意識障害を起こす場合があるため、マダニにかまれたと家族などに伝えておくことが大事です」
ダニ媒介脳炎に特効薬はないため、予防が重要になる。草地や森林などに入る場合には、長袖、長ズボンを着用して肌を露出しない、防虫剤を使用する―などの策を講じる。
世界保健機関(WHO)が最も効果的な予防法としているのは、日本を含む30カ国以上で承認されている成人・小児用ワクチン接種だ。公的医療保険は適用されず、費用は医療機関によって異なる。「初回接種の場合、流行地域に出発する1~3カ月前に、渡航外来を行う医療機関などに相談を」
「ダニ媒介脳炎の後遺症に苦しむ患者さんは、ワクチン接種が可能と知ると悔やまれます。自分やお子さんの感染リスクについて一度考えてみてください」と米川院長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/05/09 05:00)
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