治療・予防

腎機能低下で増える骨折―骨ミネラル代謝異常
骨密度のチェックを

 腎臓の障害が慢性的(3カ月以上)に続く慢性腎臓病(CKD)。重症化すれば透析や移植が必要になるだけでなく、骨にも悪影響を及ぼすことが分かっている。板橋中央総合病院(東京都板橋区)腎臓内科主任部長の塚本雄介医師は「健診などで腎機能の低下を指摘されたら、骨密度検査を受けてください」と勧めている。

水中ウオーキングなどの有酸素運動が有効

 ▽男性も骨粗しょう症に

 CKDが進行し透析に至ると、骨折しやすくなる。CKDなどの腎疾患に伴う骨の障害を骨ミネラル代謝異常という。丈夫な骨は体内でリンとカルシウムがバランスよく結合して作られるが、腎機能が低下すると、過剰なリンが尿から排せつされず血液にたまり、両者のバランスを保つため骨に含まれるカルシウムが使われてしまい、骨がもろくなる。腎機能の低下とともに、骨の形成に重要なビタミンDが減ることも、骨折を起こす要因となる。

 骨への悪影響は、CKDの初期段階から出てくる。実際、CKDの指標である推算糸球体ろ過量(eGFR)が基準値を下回ると、骨粗しょう症の割合が増えてくるという。「一般的に男性は骨粗しょう症のリスクが低く、65歳未満で骨折が増えることはほとんどありません。しかし、CKDの男性は65歳未満であっても骨折リスクが高まり、通常の女性並みです」と塚本医師。

 ▽腎臓内科に相談を

 健診などで腎機能の低下を指摘されたら、整形外科などで骨の強度が分かる骨密度検査を受けたい。1300万人に上るとされるCKD患者の9割近くを占める初期の段階であれば、骨ミネラル代謝異常による骨の障害は予防することも可能だ。

 骨ミネラル代謝異常による骨折の予防は、水中ウオーキングなど有酸素運動を主体とした運動と、栄養を考慮し塩分を控えた植物性たんぱく質を中心とした食事が基本となる。骨密度の低下が著しく、骨粗しょう症と診断された場合は、腎機能に合わせた骨粗しょう症治療薬を使う。

 塚本医師は「CKD患者には適さない骨粗しょう症治療薬もあり、定期的に腎機能と血液中のカルシウムの数値をチェックしながら服薬する必要があります。薬の影響でリンやカルシウムのバランスが崩れ血管にたまると、骨だけでなく血管にも悪影響を与え、心不全や突然死の原因にもなります。腎臓内科でCKDのチェックを受けながら、適切な予防を行ってください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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