治療・予防 2024/11/22 05:00
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がんが見つかったにもかかわらず、十分な検査を行っても、がんが最初に発生した部位(原発巣)が分からない悪性腫瘍を「原発不明がん」という。俳優のいかりや長介さんや角替和枝さんらが、このがんで亡くなっている。どのような病気なのか、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)乳腺・腫瘍内科の米盛勧医長に聞いた。
▽原発巣が消える例も
通常のがんは、最初にがんができた原発巣の腫瘍が徐々に大きくなり、他の臓器などに転移する。原発不明がんの場合、がんが大きくならないうちに他の部位に転移してしまう。転移した先が腹膜だとおなかの中に水がたまり、骨に転移すると痛みや骨折を生じるため、それでがんが発見されることがある。
転移した部位によって表れる症状が異なる
がん全体に占める原発不明がんの割合は、診断技術などの進歩により減っているが、3~5%存在する。高齢になるほど発症しやすい傾向があるという。
なぜ原発巣を特定できないのか。米盛医長は「がんが原発巣から他の部位に転移した後、まれに原発巣が消えることがあります。そうなると、精密な検査を十分に行っても発見できません」と説明する。
原発不明がんの経過は概して良くない。「転移先でがんが見つかるため、かなり進行した状態です。生存期間の中央値は約10カ月、5年生存率は10%未満と報告されています」と米盛医長。ただし、治療がよく効いて長く生存できる人や、中には治ってしまう人もいるという。
▽原発巣を推定して治療を選択
がんでは通常、原発巣のがんの特徴に応じた治療が行われる。そのため、原発巣が特定できない原発不明がんでは、治療方針が定まらない。しかし、治療をしないわけではなく、転移がんの部位や性質などから強く疑われる原発巣を推定し、これに用いられる治療を選択する。
米盛医長によると、原発不明がんとして見つかる転移部位で多いのは、リンパ節、肺、肝臓、骨など。女性で脇の下のリンパ節転移だけが見られる腺がんと呼ばれる原発不明がんの場合、乳がんを原発巣と推定し、リンパ節転移を伴う乳がんに対する治療が実施される。この場合の治療効果は高く、長く生存できる人がいるという。
米盛医長は「一般の病院で、医師から原発不明がんの疑いがあると言われたら、がんの専門病院を紹介してもらい、がんの診断や治療経験の豊富な腫瘍内科医に診察してもらうことを勧めます。それぞれの患者さんの状態に合った治療を受けてほしいからです」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/06/06 16:00)
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