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体の機能は、筋肉と関節と骨、さらには内臓と、各部が密接に関係し合っていて、使わずにいると連鎖的に衰えてくる。しかも一度衰えると、回復に長い時間を要する。廃用症候群は、病気やけがなどで長期間寝ていることで、身体的な機能や精神面などにさまざまな障害が起こる状態を指す。東京女子医科大学病院(東京都新宿区)リハビリテーション科の猪飼哲夫教授は「廃用症候群を防ぐには、治療と同時に予防を行うことが極めて重要です」と話す。
▽早期のリハビリが有効
廃用症候群になると、筋肉が痩せて筋力が低下し、関節のこわばりなどの運動器障害のほか、血栓や結石、誤嚥(ごえん)性肺炎といった循環器や呼吸器の障害、便秘や褥瘡(じょくそう、床擦れ)など、全身に症状が出る。加えて、うつやせん妄など、精神面にも影響が及ぶ。中には完全に寝たきりの状態になってしまう人もいる。
運動の習慣化が大事。仲間がいると心強い
猪飼教授は「持病を抱えて活動量が減っている高齢者ほどリスクが高く、一度廃用症候群に陥ると、元のように回復するには大変な時間がかかります。予防には、病気やけがの治療とともに、早期のリハビリ開始が肝要です」と強調する。
同院では、患者が集中治療室(ICU)にいるときから理学療法士が関与し、座る、立つ、歩くなど、可能な限り体を動かすリハビリを行っている。廃用症候群の予防だけでなく、病気やけがの回復にも効果があるという。廃用症候群が心配な家族がいる場合は、頻繁に体を起こしたり、寝ながら腕や足の上下運動を行ったりと、できるだけ体を動かすよう促すとよい。
▽筋力保ち、骨折予防を
廃用症候群の原因となりやすいのは、転倒による骨折だ。例えば、脚の付け根に位置する大腿(だいたい)骨頸部(けいぶ)の骨折は、大半が転倒によって起こる。転ばないようにするには、筋肉や骨の強化が必要だ。猪飼教授は「ウオーキングや、普段から階段を利用するなど、日常生活の中で運動を習慣化し、筋肉や骨をきちんとつくることが重要視されます。そのためには、元気なうちから地域とのつながりを持ち、一緒に運動する仲間をつくっておくといいでしょう」とアドバイスする。持病があっても、できる範囲で運動を行うのが望ましいという。
栄養面にも気を使う必要がある。「筋肉や骨の材料になるタンパク質やカルシウムを積極的に取り、バランスの良い食事を心掛けてください。日々の積み重ねが、廃用症候群の予防につながります」と猪飼教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/08/03 08:00)
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