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手術支援システム「Mako」を使った人工股関節、人工膝関節の全置換手術が6月1日と7月1日から、それぞれ保険適用になった。このシステムは、医師の操作で動くロボティックアームが治療計画にない動きをすると自動停止し、正確な手術に導く仕組み。ロボティックアームを使った整形外科手術への保険適用は初めて。普及拡大による人工関節の設置精度向上、術後の痛み軽減や脱臼率低下などが期待されている。
「Mako」手術のデモンストレーション。操作者は柴沼均副院長
◇自動停止でミス回避
関節が炎症を起こしたり、軟骨がすり減って骨が壊れたりして強い痛みが出ると、歩行が困難になるなど日常生活に支障をきたす場合がある。こうしたケースは、痛み軽減、歩行機能の回復、変形した関節の矯正などを目的に人工関節に置き換える必要が出てくる。
人工股関節の全置換手術(再置換を除く)は現在、日本で年5万2500件、同じく人工膝関節の場合は8万件行われている。
手術は従来、X線検査(レントゲン)などで患部の状態を確認、術前計画を立てて執刀していたが、近年はナビゲーション手術が普及し始めている。この手術はまず、コンピューター断層撮影(CT)検査に基づいて人工関節を入れる位置やサイズ、切り取る骨の深さなどに関する3次元の術前計画を立てる。その上で、医師が治療部位と手術器具の位置をリアルタイムでモニターで確認しながら行う。
「Mako」はナビゲーション手術にロボティックアームを加えたシステム。医師がアームにつけた器具を操作して、傷んだ骨を削ったり、人工関節を設置したりする。治療計画にない領域の骨を削ろうとすると作業が自動停止するほか、人工股関節を予定した角度通りに骨盤に設置する。
「Mako」手術のモニター画面
◇正確な設置を支援
2018年8月にMakoを導入した神戸海星病院リウマチ・人工関節センター副院長の柴沼均氏は、股関節の全置換手術について、「設置角度が正しくないと脱臼しやすくなる。人間の手だけで手術すると角度が狂うことがあるが、ロボットを使うと全く狂わないと考えていい」と語る。さらに、「患者は術後の痛みが少なく、退院も早い」と指摘し、今後の普及に期待している。
人工関節の置換手術は、医師の技量や経験に頼る面が強かった。患者の多くは高齢者で、執刀医が都市部などに集中していることもあって、手術を受けられなかったり、長い間待たされたりしていた。「Mako」の保険適用を機に導入する医療機関が増えれば、こうした患者に手術の門戸が開かれる。(舟橋良治)
(2019/08/11 07:00)
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