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長い間、お酒を一切断つという「断酒」のみだったアルコール依存症の治療。近年、飲酒量を減らす「減酒」の取り組みが始まっている。2017年4月に久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)に開設された国内初の「減酒外来」には、依存症の人だけでなく、その一歩手前の段階にある「依存症予備軍」の人たちが訪れる。減酒治療を導入する背景や狙いについて、同外来の担当医である湯本洋介医師に聞いた。
▽減酒で受診しやすく
強烈な飲酒欲求により、飲酒の量やタイミングの制御ができなくなるアルコール依存症(以下、依存症)。国内で推定107万人いるとされる依存症者のうち、受診している人はわずか5万人にとどまる。
受診率が低い理由について、湯本医師は「医療機関を受診することには『お酒をやめさせられる』『アル中の烙印(らくいん)を押される』といった負のイメージがあり、受診のハードルは高い」と指摘する。その上で、「お酒を断つのではなく、飲酒量を減らす治療を許容することによって、受診の抵抗感を減らすのが減酒治療の狙いの一つです。これまで断酒に成功しなかった人が、減酒により治療を継続し、最終的に断酒に至る可能性が期待されます」と話す。
▽依存症は病気、治療で改善
治療の間口も広がっている。17年5月から18年3月までの11カ月間に同外来を訪れた受診者92人のうち、依存症者は2割。残りの8割は、その予備軍である多量飲酒者だ。「多量飲酒者は、記憶をなくして周囲に迷惑をかける、家族やパートナーに暴言を吐くなどの問題行動がパターン化してしまった人たちです。しかし、飲酒量を減らすことで、依存症に進行するのを食い止められるのです」と湯本医師。
お酒を飲まない「休肝日」を設定するなど、個々の患者のペースに合わせて目標を設定できるのも減酒治療の利点だ。「大切なのは本人の『変わりたい』という気持ちを引き出すことです」
今年3月には、飲酒量低減薬ナルメフェン(商品名セリンクロ)が国内で発売されるなど、依存症治療の流れが大きく変わりつつある。湯本医師は「依存症になるのは本人の自己責任ではなくて、病気です。治療で改善できます。自身や家族の飲酒による問題行動に気付いたら、かかりつけの病院か精神科に相談してください」と呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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