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流産や死産を繰り返してなかなか子どもが持てない状態を不育症と言い、流産を3回以上繰り返す習慣流産とほぼ同義で使われる。不育症の原因は多様だが、中でも頻度が高いのが抗リン脂質抗体症候群とされ、低用量アスピリンとヘパリンを併用した治療が行われている。日本医科大学付属病院(東京都文京区)女性診療科・産科の竹下俊行部長に、不育症と抗リン脂質抗体症候群、および治療について話を聞いた。
▽6割超は原因不明
不育症には三大要因と呼ばれるものがある。抗リン脂質抗体症候群、子宮の形態異常、夫婦いずれかの染色体異常―だ。竹下部長は「検査をしても原因が分からない不育症も多く、全体の約65%を占めると言われています」と話す。
出産後も定期的に内科の受診を
三大要因のうち最も頻度が高いのが、抗リン脂質抗体症候群だ。抗リン脂質抗体という自己抗体ができると血液が凝固しやすくなり、絨毛(じゅうもう)と呼ばれる将来胎盤になる組織の発育が妨げられ、胎盤の血流が悪くなる。結果、流産を招きやすくなるという。「なぜ抗体ができるのかは分かっていません。抗リン脂質抗体は陽性から陰性に転じることもあり、なぜそうなるのかも不明です」と竹下部長。現在、世界中で研究が進められているという。
▽低用量で血液サラサラ
抗リン脂質抗体症候群で妊娠を希望する場合は、低用量アスピリンと、効果を高めるヘパリンの併用療法が実施される。竹下部長は「痛み止めや解熱などに使われるアスピリンは、低用量で用いると血液をサラサラにし、妊娠中でも安全に使えることが分かっています」と説明する。
同院では、妊娠が分かる少し前から低用量アスピリンを1日1回服用してもらい、胎児の袋である胎嚢(たいのう)が確認できたら、ヘパリンを12時間ごとに自己注射する方法を行っている。アスピリンは妊娠27~35週まで、ヘパリンは血栓症予防のために出産直後まで継続する。
抗リン脂質抗体の検査は、3回以上流産を繰り返す習慣流産だと診断されないと保険診療にならない。だが竹下部長は「2回流産を繰り返したら、早い段階での検査をお勧めします」と助言する。
抗リン脂質抗体は、不育症や習慣流産だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症の引き金にもなる。竹下部長は「出産後も内科の定期的な受診を心掛けてください」と強く呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)
(2019/10/03 16:00)
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