慢性炎症性皮膚疾患である掌蹠膿疱症(PPP)は手のひらや足の裏に無菌性の膿疱が再発的に生じる点が特徴で、患者のQOLに深刻な影響を及ぼす。PPPに対する治療の選択肢は近年大きく広がり、光線療法から生物学的製剤などまで、さまざまな治療法が検討されている。しかし効果や忍容性にばらつきがあり、標準治療は確立されていない。カナダ・McMaster UniversityのMiranda K. Branyiczky氏らは、近年のPPP治療に関するランダム化比較試験(RCT)を対象としたシステマチックレビューを実施。新しい技術を用いた光線療法や、幾つかの生物学的製剤で有望な結果がもたらされているとJ Dermatolog Treat(2024; 35: 2414048)に報告した(関連記事「掌蹠膿疱症、病巣感染の検出と治療で根治も」)。
13件のRCT論文をレビュー
PPPの有病率は0.05~0.12%で、欧米に比べ日本で高いことが報告されている(Fac Rev 2021; 10: 62)。しばしば掌蹠型乾癬と混同されるが、両者の違いについては一致した見解が得られていない。日本ではPPPを独立した疾患と捉える傾向が強いのに対し、欧米では乾癬の一亜型とされることが多い。
PPPの炎症の原因は汗腺における抗菌ペプチドの過剰産生や、IL-17、IL-36、Th2経路の異常な活性化と考えられている。また、アトピー性皮膚炎や潰瘍性大腸炎など、他のTh2関連疾患と共通する遺伝的基盤を持つ可能性が示唆されている。治療選択肢として局所療法や光線療法、全身性免疫抑制薬、生物学的製剤が用いられるが、標準治療は確立されておらず、治療方針の決定が難しい。
Branyiczky氏らは、現在PPPに用いられている治療法の効果を評価し、医療現場に治療指針を提供するためにシステマチックレビューを行った。使用したデータベースは、EMBASE、MEDLINE、Web of Science、Cochrane Library。PPPと診断された患者を含むRCT論文で、2018〜24年4月15日に収載されたものを対象とした。
最終的にPPP患者1,064例を含む13件のRCTが抽出された。治療には光線療法や従来型の全身性免疫抑制薬、生物学的製剤が用いられていた。
各治療法に関して得られた主な知見は以下の通り。
光線療法:エキシマレーザーが重症例に高い有効性を示す
重症PPP患者を対象とした試験(Dermatol Ther 2021; 34: e15079)においてエキシマレーザーの高い有効性が確認され、最小紅斑量の6倍の照射量を使用した場合のPPPエリア・重症度指数(PPPASI)-75達成率は95%に達した。軽症例について検討した試験(J Eur Acad Dermatol Venereol 2021; 35: e198-e200)では、レチノイドまたはフマル酸エステルと併用したソラレン紫外線A療法が効果的だった(14週時点のPPPASI-90達成率:それぞれ90.0%、81.8%)。
生物学的製剤:グセルクマブ、ブロダルマブ、アプレミラストで有望な結果
グセルクマブ、ブロダルマブ、アプレミラストは疾患の重症度に応じた有効性と安全性が確認された。例えば、日本で行われたグセルクマブの第Ⅲ相試験(JAMA Dermatol 2019;155: 1153-1161)において、同薬100mg投与16週後のPPPASI-50達成率は57.4%と、プラセボ群(34%)に対し有意に高かった(P=0.02)。また、アプレミラストに関しては、同薬30mg投与16週後のPPPASI-50達成率は78.3%と、プラセボ群(40.9%)に対し有意に高かった(P=0.0003)ことが報告されている(Am J Clin Dermatol 2023; 24: 837-847)。
一方、anakinra、セクキヌマブ、スペソリマブは主要評価項目を達成せず、効果は限定的と考えられた。
複数の炎症経路を標的とするJAK阻害薬にも期待
以上から、Branyiczky氏らは「光線療法は依然として効果的かつ忍容性の高い治療選択肢で、中でもエキシマレーザーは新しい候補として注目された。また、生物学的製剤ではグセルクマブ、ブロダルマブ、アプレミラストが有望な結果を示した。一方で、それぞれの有効性を比較し最適な治療戦略を明らかにするためには、標準化された評価指標を用いた長期研究が必要である」と総括している。
同氏らはまた、今回のレビューに含まれなかったJAK阻害薬について「複数の炎症経路を標的とする可能性があり、PPP治療における有効性が期待される。安全性と適切な使用方法についてはさらなる研究が必要である」と述べている。
(編集部・長谷部弥生)