流産〔りゅうざん〕

 妊娠22週未満で起きる妊娠の中断を指し、ほとんどは妊娠初期に起こります。

[症状]
 ほとんどが出血で始まりますが、妊娠初期では、症状のないまま超音波(エコー)検査で胎児が育っていないことがわかることも少なくありません。次に下腹痛ですが、はった感じや鈍痛などから強い痛みになって出血がふえてかたまりが出てきます。かたまりの中に粘膜や胎児の一部が含まれていることがあります。
 妊娠中期以後では、分娩(ぶんべん)と同じような経過をたどり、出血からおなかがはって規則的な陣痛となって破水するか、もしくは最初から破水で始まることもあります。
 妊娠中、少量でも出血と下腹痛が起こったらまず流産を疑います。診察を受ける必要がありますので病院・医院へ連絡をとりましょう。

[原因]
 妊娠の約15%が流産になるといわれ、母体の年齢とともに増加し、40歳以上では流産の発生率は40%以上となっています。超音波検査で胎児の心拍が確認できないことでわかる初期の流産は、はじめから発育できない受精卵で、途中で成長をとめてしまった自然淘汰(とうた)とされています。両親のせいではなく、染色体異常など胎児の異常がほとんどです。いったん胎児心拍が確認されてからの、妊娠12週くらいまでの流産も胎児の染色体異常などの胎児側の原因が多いのです。
 母体側の原因としては、子宮の異常(奇形、筋腫、頸〈けい〉管無力症など)、性感染症などの感染症、膠原(こうげん)病などの母体の病気があげられます。

[治療]
 少量の出血や軽い下腹痛の状態を「切迫(せっぱく)流産」といい、安静、子宮収縮抑制薬などで治療できる場合もありますが、胎児の異常のために起こる流産はとめることはできません。
 胎児心拍は、通常妊娠6週くらいから超音波検査で確認できるようになります。それより前には胎嚢(たいのう)という胎児を入れる羊水(ようすい)の入ったふくろの成長を目安に妊娠の経過をみていきます。胎児の心拍が確認できれば、流産する可能性はかなり低くなります。このとき、妊娠週数が正しいものであることが必要で、特に月経不順の人は最終月経から推定すると誤ってしまうことがあります。ですから、週1回程度で何回か超音波検査がくり返されます。
 流産であると診断がなされたら、子宮内容を外に出し、中をきれいにする掻爬(そうは)手術が必要になります。出血や下腹痛という自覚症状のない流産も多く、納得しにくい場合もよくありますが、長くそのままにしておくと、感染を起こすなどの危険がありますから注意してください。

■不育症
 妊娠は成立するものの、流・死産を2回以上くり返して生児を得られない状態を不育症といい、妊娠女性の5%にみられます。不育症の約半数は偶発的な流産で、特別な治療をおこなわなくても次回は生児を出産できます。しかし、残りの半数は母親の血液凝固異常や夫婦の染色体異常、子宮形態異常、甲状腺機能異常など不育症の原因が認められることがあり、それらを検査することが治療につながります。

□血液凝固異常
 血液凝固異常の代表的なものは抗リン脂質抗体症候群で、血液中にループスアンチコアグラントや抗カルジオリピン抗体など、流産の原因となる血栓(血管内にできる血の塊)をできやすくする物質が12週間以上存在することを確認して診断します。
 抗リン脂質抗体症候群と診断された場合には、妊娠初期からの低用量アスピリンや未分画ヘパリンを併用して治療をおこないます。

□夫婦の染色体異常
 夫婦の染色体異常は胎児に引き継がれることで、流産の原因となることがあります。不育症の約5%に認められます。多くは夫婦の両親から受け継いだものであり、検査結果によっては血縁者にも影響が及ぶため、検査を受ける前に、その結果のもつ意味について、遺伝カウンセリングを受けるなどして十分に理解することが大切です。

□子宮形態異常
 子宮の内腔に仕切りのある中隔子宮などの形態異常が不育症の原因になることがあります。経腟超音波検査や子宮卵管造影、MRI、子宮鏡などを用いて診断します。程度により子宮鏡で中隔を切除します。

□甲状腺機能異常
 甲状腺機能異常は血液検査で妊娠維持に必要な甲状腺ホルモン値や甲状腺刺激ホルモン値などに異常がないかを確認します。異常がある場合には薬で甲状腺ホルモンの値を正常に保ちます。

□その他
 最近では、抗リン脂質抗体症候群以外の血栓をつくりやすい素因(プロテインS欠乏症、第XII因子欠乏症など)や、母体の免疫状態が妊娠維持に適しているか(妊娠維持に有害となる免疫細胞Th1と、妊娠維持に役立つ免疫細胞Th2の比:Th1/Th2比など)を調べる検査や治療が試みられています。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 産婦人科 部長 竹田 善治)
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