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第10回 事業承継に成功した人たちは何をしたか
【開業医のためのクリニックM&A】 岡本雄三税理士事務所・MARKコンサルタンツ代表 岡本雄三

 先日、福島県医師会から開業医の事業承継についての講演依頼があり、お邪魔させていただきました。福島県医師会では、福島県医業承継支援事業として、他県に先駆けて、医業承継マッチングナビを運営するなど、地域医療の継続、発展のため、熱心な取り組みが行われています。

 講演後の意見交換では、個々のクリニックの事業承継ではなく、地域として開業医が集まって事業承継したらどうかといった案や、福島県出身で他県の医学部に進学した学生をどうやって福島県に戻したらよいかなどを話し合いました。 

 全国のそれぞれの地域で個別の事情があり、どこでも使えそうな妙案はありませんが、地域医療を守るために事業承継のさまざまな手法が今後、ますます重要になることを実感しました。

厚生労働省

 厚生労働省は9月26日、市町村などの公立病院と日本赤十字社などの公的病院の25%超に当たる全国424の病院について「再編統合について特に議論が必要」とする分析をまとめ、病院名を公表しました。

 診療実績が少なく、非効率な医療を招いて、医療財政を圧迫していると考えられるためです。

 2018年度の概算医療費は42.6兆円で、前年度に比べ0.8%増加しました。増加は2年連続で、過去最高を更新しています。

 75歳未満の医療費は0.2%減った一方、75歳以上で2.4%増えたことが全体を押し上げました。

 高齢化や医療技術の発達に伴い、今後も医療費は膨らむ見込みです。こうした中、厚労省は非効率解消を促し、ベッド数や診療機能の縮小も含む再編を地域で検討し、20年9月までに対応策を決めるよう求めました。

 以前ご紹介した、病院勤務医師の過度な残業問題の解決の観点からも、民間病院を含めた再編統合の議論がますます必要であると思われます。

 さて、今月のテーマに移りましょう。私がこれまで経験したM&Aの具体的な成功事例をご紹介させていただきます。

 ◇愛知の整形外科の事例

 15年に「開業医のためのクリニックM&A」を出版して以降、全国さまざまな地域から毎月のようにメール、電話でお問い合わせをいただいています。

 まず、愛知県の整形外科の事例をご紹介します。相談は今から5年程前にさかのぼります。事の発端は、開業以来、クリニックの事務、労務を担当されていた奥さまが60歳になったのを契機に仕事を辞めたいと院長に伝えたことです。

 院長としては、開業以来25年近く奥さまと二人三脚で事業を続けてこられ、診療以外のことは信頼できる奥さまに全てお任せでしたから、奥さまがいなくては事業を継続することが困難であるというご相談でした。

 地域の患者さんから信頼され、多くの患者さんが来院されていましたから、すぐに閉院することはできません。何とか事業を継続したいという院長のお気持ちに応えるため、私の事務所から、定期的に事務、労務を担当する職員を派遣し、事業承継ができるまで事業を続けることを考えました。

 院長には、2人のお子さんがおり、幸い2人とも医師になっていました。また、お嬢さんのご主人も医師ということで、当初、事業承継が円滑に、ご家族内でできるのではという期待が持て、家族会議を重ねました。


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