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実は私は医師になるまで、病院でもらった薬を指示通り飲んだことがほとんどありませんでした。1日3回飲むべき薬を勝手に1日1回に減らしたり、1日1回飲むべき薬を2日に1回に間引きしたりしていました。「副作用が怖いから薬は飲みすぎない方がいい」と勝手に解釈していたからです。
本当は、処方された薬を指示された以外の方法で内服すると、効果がない上に副作用だけが目立ち、かえって危険です。お恥ずかしい話ですが、このことを知ったのは医学部に入って医学を学び始めてからでした。
おっとっと!決められた用法・用量を勝手に変更すると、効果がない上に副作用がおきたりして危険です
◇効果を持続させるには
日々患者さんを診療していると、かつての私のように自己判断で薬の飲み方を変えてしまう方によく出会います。理由も私と同じで、「副作用が心配だから」「飲みすぎると体に良くないから」といった漠然としたものです。
飲み薬は、口から体の中に入ると、体内で溶けて血液中に入ります。これが全身を巡り、必要な場所で作用を発揮します。血液中に入った薬の成分は時間がたつにつれて分解されるため、効果を持続させるには、定期的に同じ薬を体に補充する必要があります。
例えば1日1回の内服が必要な薬なら、24時間おきに補充すべきだ、ということです。1日3回の内服が必要なら、8時間おきに補充する必要がある、ということですね。薬の性質によって、適切に補充すべきタイミングが決まっているわけです。
◇局所的に作用する薬も
座薬の痛み止めなどにも同じことが言えます。直腸の中で薬が溶け、その成分が血液中に入り、全身を巡って効果を表します。
もちろん、どんな薬にも副作用があります。
副作用という「デメリット」を許容するには、それを上回る効果という「メリット」がなくては割に合いません。定められた飲み方を守ることで初めて、十分な効果を期待できるのです。
塗り薬(軟膏など)のように、局所的に作用する薬も多くあります。これらは、内服薬のように成分が全身を巡って作用する薬ではありませんが、同様に時間とともに効果は弱まってきます。定められたタイミングで追加使用する必要があります。
◇血液に薬を直接入れる
では、点滴で投与する薬はどうでしょうか。点滴は、血管に針を刺し、血液中に直接薬を注入する方法です。口から飲んだり、肛門から吸収されたりするプロセスをショートカットし、最初から血液の中に薬を入れる方法だと考えると分かりやすいでしょう。
点滴の場合、飲み薬や座薬などと違い、使用方法を患者さん自身が自由に変えることができません。医師や看護師など医療スタッフの管理のもとで、厳重にタイミングを守りながら投与されるからです。
◇医師がきちんと説明
医師を含め医療スタッフも、患者さんに薬の使用方法や原理をきちんと説明しなければならないでしょう。患者さんはこちらの指示通りに使用している、と思いこんでいても、かつての私のように、きちんと使用されていないケースは多々あると思います。
人生で薬を飲む機会が全くない人はほとんどいません。ここに書いた薬の知識を持っておくと、より一層安心ではないでしょうか。(医師・山本健人)
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