治療・予防

血液によるうつ病の補助診断
確率9割に迫るPEA検査

 気力や思考力、集中力の減退、不眠や過眠などの症状が続くうつ病。通院患者は増えているが、高血圧糖尿病のように数値で診断する方法は、今のところ確立していない。そうした中、川村総合診療院(東京都港区)の川村則行院長が開発したPEA検査が、うつ病の補助診断として期待されている。うつ病かどうかを9割近い確率で診断できるというPEA検査について話を聞いた。

うつ病患者は増加。PEA検査が補助診断として期待される

 ▽低濃度でうつの可能性

 PEAとは、血液に含まれるリン酸エタノールアミンという物質のこと。川村院長らは、うつ病患者は健康な人と比べてPEA濃度が低いことを突き止めたという。うつ病患者でPEA濃度が低い理由は、現在研究中だ。

 PEA濃度は、わずか5ccの採血で検査できる。濃度の目安は、健康な人では1.50~3.00μM(マイクロモーラー)だが、うつ病患者では1.5μM以下と低くなる。「0.50~1.39μMと極端に低い人のうち、約90%がうつ病と診断されます」。うつ病である人をうつ病と判定する「感度」と、うつ病でない人をうつ病でないと判定する「特異度」のいずれもが88%以上であることが川村院長らの研究により示され、精度は高いという。

 ▽治療でPEA濃度上昇

 PEA濃度の測定は、診断を補助するだけでなく、治療効果を確認する上でも判断材料になるという。川村院長によると、PEA濃度が1.54~1.79μMの範囲になれば、症状はまだ残っている人もいるが、症状が改善し安定した状態になり、患者本人も元気を取り戻している自覚があるという。同様に、1.80~3.00μMの範囲まで上昇すれば、抑うつ自体はほとんど治っていると判断できる。

 ただし、自覚症状や医師の評価とPEA濃度の変化には個人差があるため、本人や周囲が改善したと思っても、PEA濃度が上昇するのは数カ月後になるケースもあるようだ。また、PEA濃度の測定にはスキルが必要で、ミスが出れば数値にも誤差が生じてしまう。そのためPEA検査は現在、同院のみで実施している(2011年6月より無料で実施中)。

 川村院長は、うつ病を5段階に分けて緻密な治療を行っている。「本検査はこの各段階を決定する目安として活用できます。将来的に保険診療が認められ、検査法が統一されて測定の誤差が生じにくくなれば、多くの人がより正確なうつ病診断を受けられるようになるでしょう」と期待している。(メディカルトリビューン=時事)

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